スザンヌ・レーシー “クリスタル・キルト/ウイスパー”
ミネアポリス、1978/ラ・フォヤ、1984
—430人の高齢女性たちとのコラボレーション—
スザンヌ・レーシーは多くの人々を巻き込んだパフォーマンス活動を実践している。その活動はマスメディアを取込み、人々に社会から孤立・疎外された人々の問題を持ちこむことによってアートの社会における役割を問い続けている。
レーシーは20年間以上、社会的不平等:女性、民種、年齢、経済、暴力)に焦点を当てている。人々がつねに現実だと捉えている見識が、いかに形成されてゆき信じられているかという事をアート活動を通して明らかにすることを試みる。彼女の公共における活動の目的は、不可視なものを可視にする事、そして重要なことは共感に基づいた人々のつながりを作り出す機会を提供する事である。
公共の共有空間の中において、個人の身体が個人を越えて社会的でポリティカルな領域のメタファーとして捉える試みを行ない続けている。さまざまな機関、組織、人々が関わるパフォーマンスのプロセスにおいて、“参加性”こそ彼女が人々に望むことであり、アーティストと参加メ、両者を変化させてゆくダイアローグであると考えている。
<クリスタル・キルト>
10年間にわたる計画によってミネソタ州、ミネアポリスの市内において430人の高齢女性たちが参加するパフォーマンスが行われた。会場には赤と黄色のテーブルクロスで包まれたテーブルに黒服で身を包んだ4人の女性が座り、“死”・“老い”・“家族”・“セックス”・“人的な悲劇”などを語り合う。女性たちはお互いの腕をつないだり離したりしながらパフォーマンスを行なう。数千人の観客はバルコニーから女性たちのこのパフォーマンスを鑑賞し、予め録音されている彼女らの話とネイティブアメリカンやカンボジアの歌、雷の音、鳥のさえずりなどがコラージュされたテープを聞く。
<ウイスパー(囁き)>
カリフォルニアのラ・フォヤビーチにおいて、154人の白い服を着た65歳以上の女性が、ビーチに置かれたテーブルに4人ずつ座り、様々なことを語り合う。このプロジェクトによって、コミュニティから孤立してしまっている高年齢女性たちに、地域を越えた新たなコミュニケーションが生み出された。