Steilneset Memorial スティールネセト・メモリアル

 15世紀に中央ヨーロッパで始まった魔女狩りは、17世紀にはノルウェイまで拡がり、ここフィンマルク州バルデ海岸はノルウェイにおける魔女狩りの中心となった場所として記憶されてきた。というのも、ここでの魔女狩りが市の主導によって行われ、公文書に当時の記録が詳細に残された結果、人口3000人という寒村で記録されるだけで91人が犠牲になったという確たる証拠が残されてきたからである。しかし時代と共に、ヨーロッパ全土でこの悪しき伝統の間違いを認識し、法律でも禁止されるにつれ、バルデ市でも2000年からその犠牲者を追悼するメモリアルを設置することをめざしてきたという。
 現在でも寂寥感を漂わせているノルウェイ最北部の海岸に、2011年、スティールネセト・メモリアルが完成した。それはスイス人建築家、ピーター・ズントーと、2010年に亡くなった女性アーティスト、ルイーズ・ブルジョアという、国際的なコラボによるものだ。コラボといっても、両者が異なるふたつの建築物を設置し、それぞれが魔女狩りという暗い出来事と彼女たちの人生について雄弁に物語るという体験型のメモリアルになっている。
 ズントーの建築は、木、帆布、ガラスなどからなるシンプルな直線的な形状が海岸に対峙し、打ち上げられた船のように見える。なかに入ると、長さ125メートルにも及ぶ細長い廊下のような空間に犠牲者たち91人分のガラス窓があり、その前にはそれぞれの命や人生を象徴する電球とそれぞれの裁判の記録や資料などが展示されている。
 一方、その奥に立つブルジョアのガラスの部屋には、真ん中に鉄製のイスがあり、その座面からは炎が吹き出している。その炎は部屋の四方に配置された7枚の鏡に映って増幅され、多くの犠牲者の恐怖や暗い歴史を映しだしている。
 建設はバルデ市、フィンマルク州、バランガー博物館、ノルウェイ公共道路局のジョイントベンチャーによるもの。加えて、このメモリアルはノルウェイが国を挙げて推進するツーリスト・ルートの最北部に位置する。このルートはノルウェイの自然豊かな景観をより一層のインパクトをもって訪れてもらおうという意図のもと、全国に18箇所のルートが建設された。それぞれのルートには、地域の景観やその歴史を見せ、地域の観光を振興するためのビューポイントが設置され、ノルウェイの若手建築家を中心に起用されている。地元の要望により、このメモリアルは例外的に国際的なコラボとなった。ルート工事全体はノルウェイの公共道路局が主導し、2020年の完成をめざし、総予算8billion NOK(約100million Euro)で進行中である。

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アーティストPeter Zumthor / Louise Bourgeois
アーティスト(日本語)ペーター・ズントー / ルイーズ・ブルジョア
ジャンル(建築家、ランドスケープなど)建築家 / アーティスト
場所(国)ノルウェイ
場所(原語)Vardo, Finnmark
完成年2011
施主・主催Vardo Council, Finnmark County, Norway National Roads Administration
関係団体(共催、後援、助成、協賛、協力)Vardo Council, Finnmark County, Norway National Roads Administration, Museum of Varanger
資金源公的資金
資金源(その他の場合)
予算規模(円)1億以上 
外部リンクhttp://www.nasjonaleturistveger.no/en
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