イギリスの産業革命を支えた炭鉱産業も今日その役割を終え、廃坑となった地域は衰退し、かつてのブラウンフィールドの再生と新たなアイデンティティの創出による活性化を迫られている。そのひとつ、イングランド北西部、リバプールとマンチェスターの間にある元炭鉱のまち、セント・ヘレンズに2009年、高さ20mの巨大な少女の頭部像が設置された。この作品は、炭鉱跡地、サットン・マナーの公園化に伴い、元炭鉱夫からなるグループが中心となって、自分たちの歴史を記念すると同時にまちの未来を象徴するアイコンを作り出そうとしたものだ。その主題に関して多くの議論がなされた結果、元炭鉱夫は場所の歴史を記録するだけのアイコン、すなわち、炭鉱夫の姿や産業遺構の保存などは望まなかったという。かわりに、古くからこのまちのモットーとされてきた「地球から光が立ち現れる」ということばを体現する美しいもの、未来のこどもたちへ希望の光となるアイコンを望んだという。そして、この少女の顔は元炭鉱夫たちとアーティストとの対話のなかから生まれたのだという。
この作品はイギリスの公共放送局、Channel 4がアーツ・カウンシル、アート・ファンドとのコラボで実施したアート・プロジェクトである、Big Art Projectの一環で実施された。このプロジェクトは地域主導で自分たちのパブリックアートを創り出すことを支援しドキュメントするもの。4000箇所を超える応募から7カ所が選定され、セント・ヘレンズもそのひとつである。
総予算は1.8ミリオン・ポンドで、主導は元炭鉱夫たちのグループを中心として、セント・ヘレンズ市とBig Art Trustが協働、Liverpool Biennaleがコーディネーションをおこなった。アーティストの選定はLiverpool Biennaleが準備した10人の匿名リストから選ばれたという。
素材はホワイト・コンクリートのプレキャスト90ピースからなる。その真っ白で輝く巨大な少女像は高速道路からの可視性も高い。また近づくと、コンクリートにスティール繊維、酸化チタンを配合したテクスチャーにより吸い込まれるような独特な奥行き感がある。
地元では、「元炭鉱夫たちの夢によって、”Angel of the North” (A.ゴームリー)で一躍有名になった北東部の元鉄鋼業のまちゲーツヘッド市とライバルになった!」と大きく取り上げられ、かつてのブラウンフィールドが再生された緑豊かな公園のなかで市民のアイコンとなっている。
アーツ・カウンシル、アート・ファンドの他、北西地域開発公社、EU地域開発基金、森林基金、北西部炭鉱跡地再生プログラムなどの複数の資金源により、市税は使われていない。
アーティスト | Jaume Plensa |
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アーティスト(日本語) | ジャウメ・プレンサ |
ジャンル(建築家、ランドスケープなど) | アーティスト |
場所(国) | イギリス |
場所(原語) | Suton Manor, St.Helens, Merseyside |
完成年 | 2009 |
施主・主催 | Ex-Miners Focus Group、St. Helens Council, Big Art Trust, Liverpool Biennale |
関係団体(共催、後援、助成、協賛、協力) | Arts Council England, Art Fund, Big Art Trust (Channel 4), Liverpool Biennale, Forestry Commission (Sutton Manor Community Woodland Environment), North-West Regional Development Agency, EU Area Development Fund, North-West Ex-mining Regeneration Programme |
資金源 |
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資金源(その他の場合) | |
予算規模(円) | 1億以上 |
外部リンク | http://www.dreamsthelens.com/ |
タグ(地域、テーマ) | メモリアル, ヨーロッパ |