参加型のパブリックアート Vol.8 <移民、ホームレス、教育>

クシュシトフ・ウディチコ“ エイリアンの杖”
1992−96

自らもワルシャワに生まれ、カナダ、アメリカへと移民した体験があるウディチコが、パブリックな場で声を発する機会のない都会の周縁部に住むホームレスや移民の人々が「語ることを可能にする道具」を制作した。

パブリック・スペースは、本来、特定の人のみに俗さず、すべての人々に開かれただれもが使い、自由に意見交換できる場所であるはずだが、ホームレスや移民、難民の存在は、このような真の意味での公共空間が現代では欠如していることの示している。
現代は、コミュニケーション技術が飛躍的な進歩を遂げ、グローバルに爆発的な広がりをみせる一方で、コミュニケーションにおける文化的背景の違いによる誤解、外国人に対する排斥や対立も数多く見受けられる。
杖を動かす人は、何か?と近づいて来るすべての人々の間の媒体となり、かれらの話をすべて録画、録音することができる。漂民というo験を通じた経験、要求、政治的、心理的、倫理的な葛藤をさらけ出し、文化的な背景や記憶を呼び戻し、自身の過去へのつながりを再構築するためにも使うことができる。
このコミュニケーションのプロセスを通じて、人の想いを聞き、また自分の中にある疎外感、違和感をさらけ出すことによって、個人の存在に自信を取り戻すこと、さらには本来のパブリック・スペースが再構築されることを目指している。

聖書の中の羊飼いが持っているような杖に、小さなモニターとスピーカーがついたもの。モニターには、予め録画された杖を動かす人の個人的な体験が映し出される。また、柄の部分にはその人の思い出の品々が収められている。

<Porte-Parole>は、スピーカーと小さなモニターがついた道具で、口にはめて使う。その声は、予め録音され編集されたその人の声明や物語に遮られるかまたいっしょになって聞こえてくる。
通常、「Porte-Parole (ポータブルお話器)」といった他の道具と共に、2-3人のグループで現れて、興味を持って近づいて来る人々とのコミュニケーションをはじめる。

<ホームレス・ヴィークル> 1988-89
ホームレスの人々が生活できる最低限の機能を備えたカート。伸縮性で、伸ばせば横になることもできる。ホームレスという状況をより顕在化して、それに対する意識をより深めるための批判的な表現である。

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