2015年の公開空地プロジェクトは、2月バレンタインのテーマを反映し、「LOVE」をテーマとした作品が展開された。志喜屋徹による「トランプ」の立体作品が、東京御茶ノ水の公開空地(お茶の水サンクレール/地下1階サンクガーデン)、屋内の通路に展示された。プラスチック製トランプをハトメで留めていくことで、動物、テトラポット、星などといったさまざまな立体造形がつくられた。
バレンタインを意識した「ハート型のフレーム」は夜間LED照明の光が放たれ、その中に組み込まれたトランプ造形にも暖かい光が灯る。
作品には、「大切な人」に向けたメッセージが参加者によって結びつけられ、♥マークのトランプが日を追うごとに増えていく。
屋内外の作品全体を包むように、お茶の水をテーマとして作曲家高木潤が書き下ろしたサウンド、五感演出プロデューサーの新井敦夫により「光と音が響きあう環境」がつくられ、サイトスペシフィックな共感覚表現が実現された。あたかも細胞が自然に結合しながら増殖するように、多くの参加クリエイターの「ハート力」が重なっていくプロジェクトとなった。
アーティスト | 志喜屋徹 Akira Shikiya 新井敦夫 Atsuo Arai 高木潤 Jun Takagi |
---|---|
日 時 | 2015年2月2日(月)- 3月14日(土) |
公開空地 | お茶の水サンクレール B1サンクガーデン広場 |
協 賛 | 日本出版販売株式会社 |
協 力 | SORA Synesthetic Design Studio Lighting Roots Factory |
「Heart Light Go-round」
志喜屋 徹 Akira Shikiya
五感演出プロデュース、音具演出:新井敦夫 Atsuo Arai
作曲:高木 潤 Jun Takagi
演出照明施工:Lighting Roots Factory
ふだん、なんとなく思ってはいても「愛」ってなかなか上手く表現出来ない。
片思いの人や、恋人に対しての「愛」はわりと表現しやすいかもしれないが、友達や家族、兄弟、会社の上司や部下への「愛」だって、飼っている犬や猫、植物に対する「愛」だって、すべての生きとし生けるものへの「愛」がきっとあるはずだ。ただ上手く表現していないだけなんだと思う。
「愛」が気恥ずかしいなら、「愛情」とか「思いやり」でもいいかもしれない。一度、コトバにしてみてほしい。オモテに表してみてほしい。そうすれば、ハッキリと自覚したり、それを見た人にも伝わる何かが、きっとあるはずだ。
ここにあるトランプでつくられた動物たちには、♥のカードが入っていない。
あなたが♥のカードに誰かへの♥を込めたメッセージを書き結びつけることで完成するアート作品だからだ。いっぱいになればなるほど動物たちにも♥がこもり、誰かに♥を伝えてくれるかもしれない。新しい♥が芽生えるかもしれない。(志喜屋 徹)
回転するように見えるハートの光の輪郭、いのちの鼓動・律動を表すオブジェたちの光、
新生児の時の記憶を思い起こさせるような、優しい音の響き、これらが、光のメリーゴーラウンドになり、来街者たちの思いを集めて、サンクガーデンで回り始める。
その光跡は、開催期間の41日間、お茶の水の街の一隅に「時の光の記憶」として刻まれていく。
41日間が過ぎた後も、訪れた人々の心の中で、その光はずっと回り続ける。
それは「ハート・ライト・ゴーランド(Heart Light Go-round)」となっていくだろう。(新井 敦夫)
<場の気分を生み出し、お茶の水サンクレールをひとつの空気感でつなぐ音>をコンセプトに、楽曲3曲を作・編曲しました。1曲は、「ありがとうの感じ」。バレンタイン&ホワイトデーに贈り物をする時の、『ありがとう』のやりとりの瞬間、贈った人ももらった人もニヤニヤしちゃう「あの感じ」を楽曲に込めました。1曲はこの場所周辺の雰囲気を曲にしました。ニコライ堂、聖橋、神田明神。ビルが建ち並ぶ中でも漂う澄んだ空気を込めています。もう1曲は、サンクガーデンの風の印象のサウンドスケッチ。風が渡り、行き交う人の頬に触れた瞬間、爽やかな風のリズムが生まれる、そんな印象を楽曲に込めました。志喜屋徹さんの作品とともに、この空気感を楽しんで頂けたら幸いです。(高木 潤)
2月14日深夜にライトプログラムをレッドからブルーのホワイトデーバージョンに更新。
撮影:©Atsuo Arai
「光を求めて Ⅰ. Ⅱ. Ⅲ」
志喜屋 徹 Akira Shikiya
五感演出プロデュース:新井敦夫 Atsuo Arai
作曲:高木 潤 Jun Takagi
演出照明施工:Lighting Roots Factory+光彩照明デザイン工房
アーティストプロフィール
志喜屋 徹 AKIRA SHIKIYA
兼業造形アーティスト 沖縄県生まれ 1991年 沖縄県立芸術大学卒業 1993年 東京藝術大学大学院修士課程修了 1996年 東京藝術大学大学院博士課程満期退学
広告という「世の中の人にモノゴトをどう伝えるか」を考え表現するサラリーマンとしての仕事をしながら、造形アーティストとして、六本木や横浜、香港、シンガポール、ロサンゼルスなどで展覧会や表現活動を行う。日常生活の中で当り前すぎて、関心を向けられない存在であったり、価値のない消費物として扱われるモノたちを、ちょっと視点を変え「モノが持っている別の能力」を(発見し、その力を)発揮させるコトによって、今まで見たコトのない、モノから機能性を消し、アートへと関心や注目を集めるモノに変貌させるコトを得意としている。世の中の情報や常識とは関係なく、個人の内面にある「もともと知っている力」を発見出来れば、ありきたりな日常も、生き方も変化すると考えるアーティストであり、生活においての「プチ革命家」である。
新井 敦夫 ATSUO ARAI
五感演出プロデューサー。1960年東京生まれ。音環境デザインのプランナー・プロデューサーを経て、音、光、香り等、五感の相乗効果を活かした環境演出・デザインや、ソーシャルアート等の企画・プロデュースに取り組んでいる。
東京メトロ南北線「発車サイン音」のデザイン・ディレクション等、実績多数。
「シネステティック・デザイン(五感にひびく『感覚の味わい』を生み出すアート&デザイン)」をテーマにした研究・創造活動組織「SORA Synesthetic Design Studio(SORA SDS)」代表。
高木 潤 JUN TAKAGI
ギタリスト、作・編曲家、サウンドデザイナー。SORA SDSメンバー。
様々な映画、舞台、CM等の音楽、アーティストへの楽曲提供を手がける。
劇場公開映画「ムンクの叫び」、「たべんさい 広島ラーメン物語」(葉山陽一郎監督作品)の劇中音楽、サウンドデザインを担当。