都市にある「公開空地」という不思議な空間。このスペースは、プライベートな所有地であり、 同時にパブリックな空間として存在しています。 アート&ソサイエティ研究センターは、この「公開空地」を文化的に利活用することを検討する新たなプロジェクトを2010年夏からはじめました。
オープンスペースである「公開空地」は、敷地所有者のものでありながらも、一般に開放され自由に通行または利用できる区域でもある。有効容積に応じて、容積率割増や高さ制限の緩和が受けられる恩恵をもたらす「公開空地」は、現代都市のもっとも曖昧な空間の一つともいえる。
『Open Meeting@The 公開空地』プロジェクトは、この“曖昧空間”をクローズアップし、アートによる利活用ができないかを考えるための試みだ。2010 年のプロジェクト第一弾として、現在 A&Sが拠点とする秋葉原周辺の人知れず存在する「公開空地」をクローズアップし、“アート活動としてのオープンミーティング”を開催した。
場所: 秋葉原センタープレイスビル
プロジェクターによる映像プロジェクション
夕暮れ時の18時頃、A&Sメンバー10名が秋葉原駅中央改札口よりほど近い、秋葉原センタープレイスビルの脇に存在する公開空地に集合した。
各メンバーはそれぞれ担当が決められ(プロジェクター機器、PC、自家発電機、即席ライトオブジェ、カメラ、ビデオなど)、公開空地の壁側に荷物を置き、設営がはじまった。本日の活動時間は、ちょうど一時間のみと決めてあった。
プロジェクターを備え付けた頃(設営をはじめてほぼ10分後)、一人の警備員がやって来た。 ずいぶん早く見つかったものだと思ったら、敷地を見張る監視カメラがちょうど我われを見つめている!ことに気づいた。
「なにしてるんですか?」 警備員。
「公開空地で映像を楽しもうと思って」 A&S
「ここはそういう行為は禁止されています」 警備員
「公開空地って、一般の人が利用できるんではないんですか?」 A&S
「ベンチに座ったり、通行することならできます。」 警備員
するともう一人警備員がやってきた。その後、40分ほど押し問答はつづき、本日の活動制限時間となった。 せっかくレンタルした自家発電機も使えないまま、プロジェクターで映像を写すことなく第1回 の公開空地プロジェクトは終了した。通行の人々からたっぷり注目を集めたようであるし、第 一歩としては公開空地の意味を考える上でも成功裡に終わった!などの意見を熱く語りつつ、近くの居酒屋にて冷たいビールで乾杯!
場所: インテージ秋葉原ビル
からだで公開空地に絵を描く“空中絵画”のパフォーマンス
公開空地プロジェクト第2弾は、第1弾の秋葉原センタープレイスビルを御徒町方面に進んだところにあるインテージ秋葉原ビルの交差点部にある公開空地だ。この日のミーティングは、ダンス系のパフォーマンスを予定していた。
前回の失敗を受けて、今回は無事に“活動”までたどり着けることを願いつつ、メンバー7名が、やはり夕刻過ぎに現地に集まった。本日は特別な機材はない。モデレーターをお願いしている西脇さんと北沢さんから、参加者は上下とも黒い服を着てくること、という指示だけがあった。
まずは準備体操から。公開空地にある5本の樹木を使って、ストレッチ。 通行人たちが、不思議そうに眺めらながら交差点を渡っていく。モデレーターの指示通り、公開空地の敷地の「縁」をなぞるようにメンバーが歩く。もし反対の方向から歩いて来た2人がぶつかったら、キュッと180度方向を回転してきた縁を歩 いていく、という約束事のなかで、結構、参加メンバーは熱中。
最終クライマックス。ペンライト(ホワイト、ブルー、グリーン、 ピンク、イエロー)をそれぞれ2本手に持って、空中に絵を描くように動いていく。予想外にきれいな風景になったようで、見学人が1人現れた。「なにしてるんですか?」見学人。「どこかのアート集団ですか?」「宗教団体じゃないですよね?」などの質問をビデオ担当メンバーが対応。そのうち、見学人、ちょうど帰宅する同僚3名をつかまえ、一緒に見学をはじめる。はじめてギャラリーが現れたのは、大きな進歩?
場所: UDXビルプラザ2F 色彩に溢れたアンブレラ絵画の創作
第3弾の公開空地プロジェクトは、秋葉原駅電気街口、目の前のUDXビルだったが、UDX管理事務所との調整が不調和におわり、実現できずに終わった。 UDX側としては、ビルが管理する公開空地は、いかなる場所でも利用料を支払う必要があるとしている。今回、活動使用料を支払うというのは、プロジェクトの意味を喪失しかねないため、 残念ながら諦めることにした。