現状調査で資料の状態を確認し、資料情報を目録に記録する作業と並行して、劇場である文化の家にとって重要な「公演情報」のデータベース化を検討しました。1998年の開館以来、演劇やコンサートは文化の家の主幹事業であり、その公演記録や関連資料が文化の家の歴史を伝える大切な資料であることが、現状調査を通じて明らかになりました。一方で、プログラムごとに担当者が異なり、資料の整理方法やデータ入力基準が統一されていないことが課題となっています。
プログラムの情報が担当者に属人化している課題によって、担当者以外には資料の所在やプログラムの詳細が把握しづらいという課題が浮き彫りになりました。今回の取り組みでは、目録やデータベースの入力基準を組織内で標準化することで、必要な資料や情報にアクセスしやすくなり、情報共有による業務の効率化につながることを目指しました。また、組織全体で文化の家のプログラムに対する理解と愛着が深まり、相互理解や組織のアイデンティティが強化されることも期待できます。
データベースの入力作業は、公演について詳しい文化の家のスタッフが中心になって進め、アート&ソサイエティ研究センターからは、組織内で共有しやすい項目の検討と提案を行いました。
まず、国際標準や国内外の主要機関で使用されているデータベース項目を調査していきました。こういった先行事例として他の機関と共通の標準項目を採用することで、情報共有が容易になり、外部からのアクセスにも対応しやすくなるよう工夫しました。また、組織内部で必要な情報については独自項目を設け、幅広い目的に対応できる柔軟な項目設計を進めました。
国内の事例では、最も充実した演劇資料を収集している早稲田大学坪内博士記念演劇博物館を参考にしました。同館が運営する「演劇情報総合データベース」の「演劇上演記録データベース」は、公演に関する項目が網羅されています。海外の事例では、韓国国立劇場アーカイブが使用する項目を参考にし、公演に関する関連資料(写真、映像、チラシなど)を公演情報に紐付ける方法を取り入れました。
項目は、データ管理のための「管理情報」が12項目、データベースで公開することを想定した「公演情報」が13項目に加え、入場者数や収支、アンケートなど組織内で情報管理するための項目を追加しました。データベースの項目や入力ルールは、実際の入力作業を進めながら、より入力しやすく、見やすい形にブラッシュアップしています。