ART & SOCIETY RESERCH CENTER

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2021.06.13

[活動紹介|3]写真資料の保管

最初に実施した現状調査では、90年代に撮影された初期のアーカスプロジェクトのフィルムや写真資料が多く残されていることが分かりました。イベントや制作風景など、当時のアーティストの活動内容を知ることできる貴重な記録資料です。

フィルム媒体の保存状態の課題

ネガフィルムや印画写真は劣化しやすく、当時の保管状態には様々な課題がありました。保管していた1階の保管庫は空調がなく、北向きで湿気が多い環境なので、まず保管場所を移動する必要がありました。また、ネガを入れた当時のフィルム用スリーブそのものが黄色く変色するなどの劣化が見られ、劣化の兆候が確認できたことから、写真資料の保存をまず優先して取り組むことにしました。

ネガが入っていた元のスリーブは黄色く変色していた。

写真の個数調査

ネガフィルムには外部に貸し出しをするデュープも多く、具体的に何点のネガが保管されているのかは記録されていませんでした。新しいスリーブに移し替えるためにも、具体的に何枚のスリープが必要になるか見積もりができるように、ネガの点数を集計する個数調査を実施しました。
個数調査で点数を記録し、保存状態が良くないものや改善が必要なことも備考欄にメモを残して作業履歴を残していきました。この調査で、マウントスライド、大判/中判ポジフィルム、35mmフィルム、印画紙のそれぞれの種別ごとの具体的な数量を確認できました。この数量をもとに、移し替える包材の発注数を割り出すことができました。

包材の発注と移し替え作業の実施

写真フィルムを移し替える包材については、写真保存の専門家にも意見を伺いプリントファイル社の「プリザーバー」を選びました。この包材は、写真を保存するための国際規格(PAT試験)に合格した製品であり、フィルムの長期保存に適しています。
フィルムは24時間空調管理された保管庫に置いておくのが理想ですが、その設備を導入するには大きなコストがかかります。実現可能な範囲で最適な保管環境を整備できる方法として、今回はスリーブの移し替え作業を実施しました。

新しいスリーブに移し替える作業の様子

写真目録の作成

長期保存に適したフィルムスリーブに移し替えは完了しましたが、写真は特に点数が多いので、写真用に項目を設定した「写真目録」を作成しました。目録作業のプロセスをアーカスプロジェクトのスタッフと共有して作業を進め、活動を知るスタッフだからこそわかる充実した情報が記述された目録を完成することができました。

写真資料は劣化しやすいこともあるので保存対策のバックアップとしてデジタル化することが理想的です。デジタル化すると原本を取り出すことなく画像データで閲覧できるので、ネガそのものの保存につながるだけでなく記録として活用しやすくなります。将来的にはデジタルアーカイブとして公開するなど、さまざまな活用が期待できます。