ART & SOCIETY RESERCH CENTER

P+ARCHIVE

2010.06.15

アートとアーカイブ

6月も中旬になり、そろそろ「P+ARCHIVE」レクチャー受講の応募締め切り(6月18日)が近づいてきました。
われわれP+スタッフも、レクチャーや研究会のレジュメ作りがいよいよ急事になってきました。

初回のレクチャーは7月24日、講師はアーティストの川俣正氏。
川俣氏は既成の「アート」概念をつねに乗り越えようとしてきた第一線の越境者。その彼がいま「アート」を「アーカイブ」することについて、どのような考えをもっているのか。とてもエキサイティングなレクチャーになりそうです。

実を言えば、アート・アーカイブ構築にあたり、受講者とともにどのようなことを学ぶべきか、正直、われわれもわからないことだらけです。

そもそも、「アーカイブ」とは何なのでしょうか?
それは単なる収集・保存活動でしょうか、それとも何らかの「理念」なのでしょうか。

先日、慶応義塾大学で行なわれていたアート・アーカイヴ資料展「アーカイブの現場」を見学してきました。

パンフレットには次のようなことが書いてありました。
「アート・アーカイヴの現場とは何か。まず、アーカイヴ作業が遂行されている場所は確実にアーカイヴの現場である。(中略)しかし、アーカイヴィングという作業は資料を生成した場から引き離し、研究資料として再編成することであるとすれば、アーカイヴにとっての「現場」とは何かという問題は一筋縄ではいかない。」

つまり、アーカイブ資料というのは、一つの例外もなく、そのもともとの文脈を離れざるを得ないということです。アーカイビングというのは「文脈を置き換える」ことという、何か責任重大な作業のようにも思えてきてしまいます。

ただそう考えると、実はこの問題、近現代のアート環境における「メディア」の問題と深く重なってくることがわかります。

例えば、音楽CD。
遠い昔に録音された音楽が、文脈を離れて、いま私の手元に「デジタル・データ」として存在しています。ではこのデータは録音された際の音楽「そのもの」でしょうか。
われわれは音楽再生メディアや、絵画などの複製メディアに何を「見て」いるのでしょうか。
この問題は「文脈を置き換える」アーカイブ理念にも通じてきます。

以上のようなことを考えるだけでも「アート」と「アーカイブ」が切り放せない親和性をもっていることがわかります。われわれはアート・アーカイブ構築を通して、このような理念的考察も深めなくてはならないでしょう。

初回アップは長くなってしまいました。
P+ARCHIVEのプロジェクトを進めていくなかで、ふと気になったことや、学んだこと、そしてスタッフや受講者の喜び・苦しみなどを、今後も少しずつ、ブログを通してお伝えしていければと思います。

それでは、P+ARCHIVEのはじまりはじまり〜!

アート&ソサイエティ研究センター
清水康宏

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