猛暑の続く8月4日(水)午後7時より、第2回研究会を開催しました。
前半は、アート&ソサイエティ研究センターの理事で慶応義塾大学教授、熊倉敬聡氏の「アートプロジェクトとは何か」についての講義があり、後半は、第一回レクチャーに先立ち受講生の方へ出されていた課題「川俣正のアートプロジェクトをアーカイブするためにはどのようなものを収集・保存すべきなのか」について、7月24日の川俣氏のレクチャーを受けて、再度検討を行いました。
熊倉氏は、「アートプロジェクトの功罪」という刺激的なレジュメを用意され、妻有、京島などのアートプロジェクトを例に、アートプロジェクトのアンビヴァレンツ(まち「づくり」なのか、まち「こわし」?)を提起されました。はたして、地域の人にアートプロジェクトは必要なのだろうか?と。
この提起は、川俣氏が、レクチャーの中でもふれられていたことと重なると思います。
レクチャー後半の現在進行中のCIAN(インターローカル・アート・ネットワーク・センター)の活動紹介の中で、「妻有トリエンナーレが開催されるようになり、地元のおじいちゃん、おばあちゃんが元気になったと言われているけれど、実際そうなのだろうか?」と。そして、「アートというものに力があるとすれならば、何に力があり、何に力がないのか、それがどのように見えてくるのか、あるいはいつ見えてくるのか、そんなことをかなり細かくリサーチしていくのが、ひとつのアーカイブの意味だと思う」と話されていました。
同様に、熊倉氏もアートプロジェクトのリサーチの必要を語られていました。
アーカイブとリサーチの関連、着目していきたいです。
そして、熊倉氏が言及された、この20年ぐらいの現代美術をめぐる状況の変化についても、「P+ARCHIVE」の視野に入れていければと思います。
「P+ARCHIVE」の研究会は、レクチャーと関連しながらすすめていくので、かなりパフォーマティブなものになるのではと予想はしていたのですが、今回も当日の直前の打ち合わせで、後半のディスカッションは、熊倉氏のアドヴァイスで「ワールド・カフェ」*スタイルで進行することになりました。
4人で1グループになり、机に模造紙を広げ、それぞれのグループで、ひとりづつ課題についての意見を述べ、それぞれがペンで模造紙に記録していきます。20分たった時点で、グループの一人を残して、他の3人は異なるグループに移動します。グループに残った一人は、そこでディスカッションされていた事を新しくきた人に話し、また新たな3人とディスカッションを続けていきます。
今回は時間が限られていたので、さらに20分経過したところで、グループの一人の方に、そこでディスカッションされたことを発表していただきました。
4つのグループからの発表は、それぞれの視点、切口が興味深かったです。(*それぞれの発表については、後日研究会担当者がまとめる予定>>>研究会記録)
川俣氏も「いろいろなアーカイブの考え方、方法とシステムがあり、生きた資料をどう使うかをその都度考えていくしかないと思う。」と話されていました。
多様性を生かしながらも、アーカイブについてのディスカッションを深めていく「ワールド・カフェ」のプロセスは、示唆深いものだったと思います。
とはいえ、関係者はグループに入らないそうで、参加できませんでした。
受講生のみなさん、いかがでしたか?
K.YASUDA
*「ワールド・カフェ」は、ご存知の方も多いと思いますが、「知識や知恵は、機能的な会議室の中で生まれるのではなく、人々がオープンに会話を行い、自由にネットワークを築くことができる『カフェ』のような空間の中でこそ、創発される」という考えに基づき、1995年にアニータ・ブラウン氏とデイビッド・アイザックス氏によって開発・提唱されたダイアログの一つで、現在ワールド・カフェの思想や方法論は世界中に普及し、ビジネスはもちろん、NPOや市民活動、政治、教育、さまざまな分野で活用が進んでいます。
ワールド・カフェの原理
1)コンテクストを設定する/2)もてなしの空間を創造する/3)大切な質問をする/4)全員の貢献を促す/5)大切な視点を、他花受粉させてつなげる/6)洞察に耳を澄ます/7)集合的な発見を共有する <アニター・ブラウン他『ワールド・カフェ』)