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2010.07.28

川俣レクチャーが終わって

「アート活動としてのアーカイブ」ゼミ第一回の川俣正氏によるレクチャーが先週の土曜、無事に終わった.川俣氏自身のアートプロジェクトを記録する考え方や,プロジェクトをアーカイブ化する困難性について,制作者であるアーティストの生の声で聞けたことは,非常に価値のある時間だったと思う.
アートプロジェクトのアーカイブ化は,すでに決まったフォーミュラがあるわけではない.おそらく将来的にはあるスタンダードな形というのもがつくられるだろうが,現段階において,アーカイブに関わる人間が,右往左往しながら,自分たちの求める形を求めていく段階なのだと思う.

余談だが,レクチャーの翌日の日曜日,朝の8時過ぎに川俣氏から携帯に電話が入った.前日,かなり遅く就寝したので,その時にはまだ寝ていたのだが,起きてから気づいてみると留守電が2件入っていた.聞いてみると録音には何の応答もなく,ただ周辺の音が延々と聞こえてくるだけだ.何分ぐらいの録音だったのか・・・どうやら列車の中だということが分かりはじめた頃,車内放送が聞こえ新幹線の中だと判明した.
昨夜のレクチャーの後,何事かまずいことが起きたのかと慌てて川俣氏に電話で確認すると,「あっ,何かの間違えで電話がかかっちゃったんですかね・・・?」という返事で一安心したのだが.

しかし,このちょっとしたアクシデントは,後で考えると面白い体験だったように思う.録音をボーっと聞いていると,なにか不思議な気持ちがした.列車で移動している臨場感ある雰囲気が伝わってくる.もちろん川俣氏の移動に同行したわけではないのだが,私自身がリアルに体験しているような感じだった.

録音はin Progressに起こっている川俣氏の日常を記録したものとなり,プロジェクトとプロジェクトの隙間の時間を切り取ったような記録だともいえる.まさにこれはプロジェクトに関わる個々人による川俣プロジェクトのアーカイブ化であるのかもしれないと感じた.

Y. KUDO

(写真:廣瀬遥果)

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