7月11日、国立国会図書館総務部の松永しのぶさんによる「アーカイブズを公開するにあたって:法の観点から」についてのレクチャーがありました。
まず、アート・アーカイブに関する法には何があるのかお話いただきました。
アート・アーカイブに関する法には著作権法、個人情報保護法、公文書管理法の3つがあるそうです。
著作権は知的財産権の一つで、著作物を創作して時点で自然発生すること、著作者の死後50年権利が及ぶことを教えていただきました。
また、著作権には財産権と著作者人格権が含まれていますが、財産権は他人に譲渡できても著作者人格権は譲渡できないことになっていることも教えて頂きました。著作物の「利用」に関しては例外規定として、私的複製(30条)、引用(32条)、教室での引用(35条)、非営利での上演等(38条)が認められているそうです。
個人情報保護法は平成15年に「個人情報保護関連五法」として制定された法律です。個人情報の取得に伴い、利用目的を通知・公表しなければならない、個人情報を第三者に提供する際には原則本人の同意が必要であるなどの規定があるのだそうです。
公文書管理法は2009年に成立した法律です。当時の年金問題等での公文書の杜撰な管理に対して法制化がなされたそうです。政策決定過程を検証できる形で文書を作成できるようにすること、歴史的な公文書は原則国立公文書館などへ移管すること、施行後5年をめどに見直しをするなどの規定が盛り込まれています。
その次にQ&Aタイムとして、著作権に関わるいくつかの事例に対し、どのように対応すればよいかを皆で考えました。「外国人の著作物も保護されるのか」「人物が写っている写真を利用したいがどうすればよいか」などの25個の具体的な問題が出され、最後に松永さんに解答と解説をしていただきました。
その後、P+Archiveでのアート・アーカイブに関する法という視点でお話しいただきました。
P+Archiveでは、主に「保存」と「公開」の段階でアーカイブに関する法が関わってくるのだそうです。情報の収集目的・方法や利用・提供方法の確認、許諾をどの段階で、どの方法で得るのか、保管と廃棄に関してはどうするのか等、様々な面で著作権や個人情報に関することが関わってきます。そのような中で、ガイドラインを出していく必要があるということも教えて頂きました。
最後に近年の動向として、日本の著作権の改正、イギリスにおける著作権法の改正案、クリエイティブ・コモンズ等について教えていただいた後、時事的な問題を取りあげ、一体どこまでが個人情報なのか、公文書の扱いはどうあるべきなのか、といった問題提起もされながら、レクチャーは終了しました。
以上
(P+Archive受講生 黒川岳)