ART & SOCIETY RESERCH CENTER

P+ARCHIVE

2012.10.17

P+ARCHIVE2012 9月14日オリエンテーション 報告

P+ARCHIVEレクチャー&ワークショップの後半の実践コースの第1回として、9月14日にオリエンテーションが実施されました。

「日々の明々後日」にて円卓を囲みながら。

前半のベーシックコースではレクチャーを中心に、アーカイブについて様々な観点から学んできました。後半の実践コースでは本年度でケーススタディとしている「種は船」プロジェクトの資料を、受講生とともにアーカイビングしていく作業に取り組んでいきます。

実践コースの第1回として、アートプロジェクトの現状について受講生とともに共有し、これからのアートプロジェクトのアーカイブを考える機会としてオリエンテーションが開催されました。この日は特別に同じ3331 Arts Chiyodaの3階に入居している「日々の明々後日」のスペースをお借りして、円卓を囲みながらリラックスした雰囲気で進められました。

まずは実践コースの初回としてベーシックコースのレクチャーに引き続き、再び日比野さんにお話を伺い、そして日比野さんの個人事務所であるヒビノスペシャルの元アシスタントの米津さん、現アシスタントの森本さんにもトークに参加いただきました。ワークショップなどを続けているうちに、作っていく「課程」をもっと大事にしていきたいと考えるようになったという日比野さんの言葉から始まり、過去の活動における記録をどのように残してきたのか、ヒビノスペシャルでの記録の管理や予定の管理で難しい点などをアートプロジェクトの現場でのお話を伺うことができました。

「アートプロジェクト」という言葉が定着する前から各地でワークショップを重ねてきた日比野さんですが、プロジェクトの背景や過程まで伝えられる記録が残しきれていないと感じてきたそうです。過程を伝えられる記録をアーカイブとしていかに残していくかは、アートプロジェクトに携わるアーティストや関係者に共有の問題なのかもしれません。

「モノ」をつくるよりも「コト」をおこすアートプロジェクトを続けるうえで、アーカイブが評価基準となりアートプロジェクトに未来に繋がるという日比野さんの言葉は、これからのアート・アーカイブがどのように発達していくのかを考えるうえで印象的でした。

「種は船」の資料に触れながら意見交換

そして資料を残すよう努めながら活動してきたという今年度の「種は船」プロジェクトの資料を手に取りながら、受講生や関係者で意見交換をしていきました。この日は「種は船」でも中心的に活動されていたtorindoの森真理子さんや、舞鶴での記録調査を行なっているrecipの吉澤弥生さんにも同席いただいていたので、資料のコンテクストについてや舞鶴での調査活動についてもお話いただくことができました。

「アーカイブはアーティスト自身ではなく、その周りにいる関係者が率先して残すべきではないか。」

「記録への意識に囚われ過ぎて、本来の表現活動に影響してしまうのではないか。」

「Facebookのように記録することが当たり前になった21世紀では、アーカイブを残すことがアートプロジェクトのスタンダードになる。」

「資料を掘りさげていくことで、一つの資料からどれだけの人が関わっていたのか、そこに顔が見えるアーカイブが良い。」

などアートプロジェクトとアーカイブというトピックについて様々な意見を交換しながら、これから始まるワークショップに向けて意見交換できたオリエンテーションとなったと思います。

P+ARCHIVE
井出竜郎