アート活動をいかにアーカイブするか・・・を目的とするP+Archiveレクチャー2回目は、東京大学 研谷紀夫氏をお迎えしました。
活動を記録するために、デジタルカメラで撮影。または、ドキュメント(書類など)を残すためにスキャン。・・そんなことは日常茶飯事。
普段何気なく、記録するために作成しているデジタル画像・映像ですが、「記録画像を作成した過程を記録」する必要があるのです。その記録項目は、参加者の想像をはるかに上回り、およそ100項目!!デジタル化の手順と記録項目を世界基準に準拠・比較しながら、「やさしく、丁寧に」解説しているが、『文化資源のデジタル化に関するハンドブック(詳細版)』(研谷他 著)です。
研谷氏は、10年以上デジタル・アーカイブについて研究され、デジタル画像・映像他(ここではDCH=Digital Cultural Heritageと呼称。文化資源をデジタル化した総体)の信頼性を高め、将来的にも学術的な研究資料として活用されることを目指します。レクチャーでは「ガイドライン」(『ハンドブック』の前身)の実践例を紹介されました。
北京城の「建築装飾」を記録した「(スケッチ入りの)印刷物」「VR(バーチャルリアリアリティー)映像」「現地」の比較です。調査では、三つを机上で比較するため、デジタル撮影・デジタル化したDCHを材料にします。すると、扉の「赤色」の比較だけでも、デジタル化の詳細な情報(デジタル撮影の条件や環境、VRの制作背景など)を知る必要が生じ、記録項目が約100ある理由も納得できます。
それら記録の「作業コストは?」「全公開の必要性は?」「公開上の注意は?(権利関係)」という課題もありますが、自動抽出機能などの技術的サポートにより克服できる面もあります。
最後に、研谷氏は「現代活動する人物のアーカイブをつくるには?」というP+Archiveの目的についてコメントしてくださりました。
研谷氏は、「とりあえず資料を集積」することと提案。人物(作家、芸術家、研究者など。生存時は資料を抱え込みがちな集団?)が生成する資料をまず集積・蓄積し、「あるタイミング」(自身が資料整理を思い立った時、人物の死)に家族・関係者を一同に会する場を設けます。そこで、まず彼らに人物や集積した資料について語り合ってもらい、その場を記録します。次に、彼らの価値判断で資料から取捨選択してもらい、捨てる物と残す物を分けます。(実際、全資料を残すことはほぼ不可能。)その後、出来上がったものが「(人物の)アーカイブ」となります。(特に、作家、芸術家、研究者など)「人物アーカイブ」制作プロセスは、ある程度定型化できるのではないか、と提起されました。
ここで、アーカイブは「有(残)と無(捨)の体系」であること、良質のアーカイビングには「(作成の)タイミング」を見出す「コーディネーター」の手腕が必要であると示唆されたように思われます。アーカイブにセンスが必要です。
『ハンドブック』は2007年から試行的に制作され、近日中にWebサイト上で公開する予定。ぜひ、個人の方から団体・組織の方までご覧ください。
(P+ARCHIVEゼミ受講生 小林美貴)