ART & SOCIETY RESERCH CENTER

P+ARCHIVE

2024.09.12

開館25周年記念シンポジウム「舞台芸術を未来へつなぐアーカイブ」

長久手市文化の家は、2023年度で開館25周年を迎えました。この節目を記念して、演劇の記録を残すという課題について議論する場として、文化の家が主催するシンポジウムが企画されました。アート&ソサイエティ研究センターも登壇者としてP+ARCHIVEの活動について報告する機会を得られました。

P+ARCHIVEの活動は、アート・アーカイブを対象として取り組んでおり、舞台芸術アーカイブについては専門とは言えません。しかし、文化の家のアーカイブ構築を支援する中で、分野を超えた課題の共有や意見交換がいかに重要であるかを常に実感してきました。さまざまな分野で活動する登壇者が集まり幅広い内容で発表したこのシンポジウムは非常に充実した内容であり、参加者としても多くの学びが得られる貴重な時間となりました。

開催概要

開館25周年記念シンポジウム「舞台芸術を未来へつなぐアーカイブ」
開催日時:2024年3月24日(日)13:00 〜 16:30
会場:長久手市文化の家 森のホール (オンライン配信あり)
主催:長久手市

プログラム

第1部:舞台芸術アーカイブと劇場の蓄積
岡室 美奈子(早稲田大学文化推進部参与・文学学術院教授)
「舞台芸術アーカイブのゆるやかな定義と早稲田大学演劇博物館の実践」

生田 創(長久手市文化の家館長)
「長久手市文化の家の25年間」
山本 宗由(長久手市文化の家)
「長久手市文化の家のアーカイブ活動について」

第2部:地域の劇場と芸術アーカイブ
井出 竜郎(アート&ソサイエティ研究センター)
「アート・プロジェクトのアーカイブ構築から考える可能性」

新里 直之(京都芸術大学舞台芸術研究センター)
「未来の創造、コミュニケーションの創発に向けてーー京都市内における劇場のアーカイブ活動」

渡邉 朋也(山口情報芸術センター[YCAM])
「創造の連なり—作品の修復・保存から始まる再創造」

第3部:登壇者によるパネルディスカッション

発表内容の概要

まず、「P+ARCHIVE」で取り組んできたアート・アーカイブ活動を紹介し、形に残りにくいアートの活動をどのようにアーカイブしていくかという、舞台芸術とアート・プロジェクトに共通する課題を提示しました。そして、文化の家のアーカイブ構築をサポートしてきた立場から、文化の家の組織内でアーカイブに対する意識がしっかりと根付いてきているという重要な成果を報告しました。

例えば、文化の家で定期的に実施されている「アーカイブデー」では、スタッフが自主的に参加し資料整理を行うだけでなく、意見交換も活発に行われています。こうした取り組みを通じて、アーカイブの意義や必要性がスタッフに浸透している様子が、打ち合わせなどを通して伝わってきます。このような意識の共有が広がることで、過去の事業についての共感が新旧スタッフの間で自然に生まれ、スタッフ同士のつながりも深まるなどポジティブな波及効果が生まれています。

アーカイブ作業は時間がかかり、新しい創作活動に比べると後ろ向きに見られ後回しになりがちです。そのために、アーカイブに対する意識の醸成は、多くのアーカイブ機関や組織にとって最も難しい課題の一つです。文化の家のように、スタッフ間で意識の共有が進んでいることは、劇場アーカイブの一つのロールモデルとして発信できる点です。

文化の家の取り組みを伴走する立場からの気づきとして、文化の家の取り組みの価値とアーカイブが生み出す可能性を伝えました。このシンポジウムが一つのマイルストーンとなり、次の周年に向けて、文化の家のアーカイブ構築の取り組みがさらに広がることを期待しています。

シンポジウムの収録映像は、文化の家のウェブサイトでアーカイブ配信されています。ご興味のある方は以下のページよりぜひご覧ください。

開館25周年記念シンポジウム「舞台芸術を未来へつなぐアーカイブ」【3月24日(日)】
https://bunkanoie.jp/archives/5735