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2024.09.12

長久手市文化の家|現状調査の実施

長久手市文化の家のエントランスホール。設計は建築家の香山壽夫。

2020年度から本格的なアーカイブ構築に向けた予備事業として、長久手市文化の家で現状調査を実施しました。

この調査では、施設全域に分散して保管されている資料の保管状況を把握し、次の段階で行う資料の詳細調査、目録作成、シリーズ編成などに必要な情報を収集しました。現地での調査は、長久手市文化の家のスタッフの皆さんとの協働で行い、アーカイブの取り組みを担当する生田創さん、山本宗由さんには資料の保存状況についてヒアリングを行いました。

初回のヒアリングは、2019年12月18日にレクチャーを実施した際に行い、その後、2020年1月と2月に再度現地を訪問し、現場調査を進めました。
※3月に予定していた現状調査は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により延期。

現状調査の様子。棚ごとに番号を付与し、保管されている資料を記録。

調査を通じて施設の各所に重要な資料が保管されていることが確認できましたが、保管された資料の全体を把握したことで保管上の課題も明らかになりました。演劇アーカイブでは、舞台そのものを残すことは不可能ですが、その舞台のできごとの周縁で作られる映像記録や写真、衣装などの資料は大切に保存されてきました。しかし、多くの資料は未整理の状態であり、今後のアーカイブ構築に向けたプランニングを進めていきました。

長久手市は、市内人口の1%を芸術家が占める「アートのまち・長久手」としても知られており、多くの市民やクリエイターが芸術文化に触れる機会をつくってきました。こういった資料は地域にとっても価値のあるもので、今後もさまざまなかたちで活用される機会も多いことが期待できます。

アーカイブ資料は劇場スタッフにとどまらず、市民や外部のクリエイターなどにとっても貴重な文化資産になります。公益性の高い資料をアーカイブとして保存し、市民が活用できる環境を整備することで、長久手市の文化環境を支える館の強みを広くアピールすることもできます。

文化の家のメインホールのひとつ「森のホール」

現状調査は2019年度から2020年度にかけて、具体的なやり方を共有しながら作業は文化の家スタッフが進める体制で取り組みました。カタログなどの発行物が約1625点、映像資料は約1613点、写真点数は1026点というように具体的な点数が把握できたことで、アーカイブ構築の方針を立てやすくなったり、保管スペースに資料と備品が混在しているなど改善が必要な点も見つけやすくなりました。

当法人としても、文化の家の取り組みは演劇文化の発展において重要であると考えており、今後も文化の家におけるアーカイブ構築の支援を続けていきたいと思います。