10月14日、千代田3331のP+Archiveプロジェクトの一環で、野毛Hana*Hanaで限定復元された伝説のジャズ喫茶“CHIGUSA”におじゃましました。
ジャズ喫茶“CHIGUSA”は戦前から始まり、戦時中も休業することなく74年間にわたりジャズファンに愛された「ジャズを聴くための」喫茶店。生演奏のジャズバーとは異なり、つわもののオーナー吉田衛氏こだわりのジャズレコードを、コーヒーとともに静かに味わう空間でした。
生活の中にジャズがあった時代、多くの若者とジャズファンがこの場所に集いました。その人々にとって、吉田氏は非常に大きな存在でした。多くの人に慕われたオーナーが亡くなった後、“CHIGUSA”に来ることが無くなった人も多かったとか。
“CHIGUSA”が閉店するとき、貴重な資料の多く、レコード、家具、カウンターや機器まで、その重要性を知る人たちにより保存されました。しかし、大切に大切に今も使われ続けるテーブルもあれば、日の目を見ることなく仕舞い込まれたレコード達もありました。
ちぐさアーカイブプロジェクトでは、この機会に写真資料をもとに店内を再現。スピーカーなどの機器から寸法を割り出し、こつこつと復元していった店内はとても魅力的で、当時流されていたレコードも聴くことができました。店内を満たしたその音はとても柔らかくて、「無言で音に包まれる」心地よさを感じました。
“CHIGUSA”の音を生き返らせるために奮闘された担当の方の力の甲斐もあり、訪れた当時を知る方々が、「ああ、この音だ」と言われたそうです。
“CHIGUSA”の思い出を残していくために開かれたアーカイブ展。今後復元された店舗はどうなるのか未定だとか。ひとつの文化の記憶としても大切なこの空間がこのまま失われることが無いよう、ちぐさの方たちは手を尽くしていらっしゃいます。アーカイブを勉強するにつけ、大きな資料をどういった形で残していけばいいのか、考えずにはいられません。
(文・写真 P+ARCHIVE受講生 橋本夏生)