Oklahoma City National Memorial & Museum
オクラホマシティ・ナショナル・メモリアル&ミュージアム

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1995年4月19日、オクラホマシティに所在する連邦政府ビル(アルフレッド・P・マーラー連邦ビル)の前で、当時26歳のアメリカ人男性ティモシー・マクヴェイが、大量の爆発物をトラックに積み、爆破テロ事件を起こした。これによって9階建てビルの北側全てが崩落し、168人が死亡、650人以上が負傷した(9.11以前では、アメリカ国内で最悪の被害をもたらしたテロ事件)。
事件後、ビルの跡地は金網のフェンスで囲われたが、そこに捧げ物(花輪、星条旗、ぬいぐるみ、Tシャツなど)を吊していく人々が絶えず、恒久的なメモリアル建設への気運が高まった。当時の市長は350人のメンバーによる特別調査委員会を任命し、具体的な検討を開始した。
特別委員会は、1996年3月にメモリアル・ミッション・ステートメントを発表。爆破による死者、負傷者、救助隊をはじめ、関係した全ての人々を悼み、讃え、希望と癒しにつなげる「シンボリック・アウトドア・メモリアル」と、事件を後世に伝え、そこから教訓を得るための「メモリアル・ミュージアム」の建設を答申した。同年3月に特別委員会は、ミッションを実現するための組織「オクラホマシティ・ナショナル・メモリアル財団」となり、最初の事業としてメモリアル・デザインの国際コンペを実施した。コンペには、全米50州と23ヵ国から624のエントリーがあり、パブリック・ディスプレイの後、5案にしぼられ、1997年7月、当時ドイツを拠点に活動していたButzer Design Partnershipのプランが選ばれた。
2000年4月19日、アウトドア・シンボリック・メモリアルの完成披露式典が行われ、クリントン大統領が参列。翌2001年の2月19日には、ブッシュ大統領夫妻によってメモリアル・ミュージアムの開館式が行われた。

<アウトドア・メモリアル>
○時のゲート……爆破の時刻9:02を挟み、東門には9:01、西門には9:03の表示
○リフレクティング・プール……かつてN.W. Fifth Streetだったところを人工池に
○エンプティ・チェアのフィールド……ガラスをペースとした168の椅子を配置
○サバイバー・ツリー……爆破から生き延びたアメリカニレの木を保存      ほか

<メモリアル・ミュージアム>
エリアの北側に位置するジャーナル・レコード・ビルの2フロアがミュージアムになっている。このビルも爆破の被害を受けており、ミュージアムの一角は、爆破直後の破壊された状態をそのまま保存している。

総事業費は、財団基金を含めて2,910万ドル。施設の管理運営は、オクラホマシティ・ナショナル・メモリアル財団が行っており、その経費は、ミュージアムの入館料、ストアの売上げ、OKCメモリアル・マラソンの収益、個人寄付、基金の運用益などでまかなっている。公的な補助は受けていない。

時のゲート

時のゲート

リフレクティング・プール

リフレクティング・プール

エンプティ・チェアのフィールド

エンプティ・チェアのフィールド

エンプティ・チェアのフィールド

サバイバー・ツリー

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Dream ドリーム

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 イギリスの産業革命を支えた炭鉱産業も今日その役割を終え、廃坑となった地域は衰退し、かつてのブラウンフィールドの再生と新たなアイデンティティの創出による活性化を迫られている。そのひとつ、イングランド北西部、リバプールとマンチェスターの間にある元炭鉱のまち、セント・ヘレンズに2009年、高さ20mの巨大な少女の頭部像が設置された。この作品は、炭鉱跡地、サットン・マナーの公園化に伴い、元炭鉱夫からなるグループが中心となって、自分たちの歴史を記念すると同時にまちの未来を象徴するアイコンを作り出そうとしたものだ。その主題に関して多くの議論がなされた結果、元炭鉱夫は場所の歴史を記録するだけのアイコン、すなわち、炭鉱夫の姿や産業遺構の保存などは望まなかったという。かわりに、古くからこのまちのモットーとされてきた「地球から光が立ち現れる」ということばを体現する美しいもの、未来のこどもたちへ希望の光となるアイコンを望んだという。そして、この少女の顔は元炭鉱夫たちとアーティストとの対話のなかから生まれたのだという。
 この作品はイギリスの公共放送局、Channel 4がアーツ・カウンシル、アート・ファンドとのコラボで実施したアート・プロジェクトである、Big Art Projectの一環で実施された。このプロジェクトは地域主導で自分たちのパブリックアートを創り出すことを支援しドキュメントするもの。4000箇所を超える応募から7カ所が選定され、セント・ヘレンズもそのひとつである。
 総予算は1.8ミリオン・ポンドで、主導は元炭鉱夫たちのグループを中心として、セント・ヘレンズ市とBig Art Trustが協働、Liverpool Biennaleがコーディネーションをおこなった。アーティストの選定はLiverpool Biennaleが準備した10人の匿名リストから選ばれたという。
 素材はホワイト・コンクリートのプレキャスト90ピースからなる。その真っ白で輝く巨大な少女像は高速道路からの可視性も高い。また近づくと、コンクリートにスティール繊維、酸化チタンを配合したテクスチャーにより吸い込まれるような独特な奥行き感がある。   
 地元では、「元炭鉱夫たちの夢によって、”Angel of the North” (A.ゴームリー)で一躍有名になった北東部の元鉄鋼業のまちゲーツヘッド市とライバルになった!」と大きく取り上げられ、かつてのブラウンフィールドが再生された緑豊かな公園のなかで市民のアイコンとなっている。

 アーツ・カウンシル、アート・ファンドの他、北西地域開発公社、EU地域開発基金、森林基金、北西部炭鉱跡地再生プログラムなどの複数の資金源により、市税は使われていない。

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ART × 公開空地
― 都市に介入するアート・コンペティション ― 【公募終了】

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poster公募は12月23日(月)をもちまして終了いたしました。
多数のご応募を誠にありがとうございました。

応募いただいた作品については、責任をもって管理し、審査させていただきます。最終審査終了後にすべての応募者にメールで結果を通知いたしますので、審査結果についてのお問い合わせはご遠慮ください。

フライヤーPDFダウンロードはこちらから (5.2 MB)

開催趣旨

「ART×公開空地 ―都市に介入するアート・コンペティションー」は、都市の貴重なオープンスペースである“公開空地”に光をあて、若手アーティストが自身の活動を発表し、人びとが楽しむ都市アートイベントです。
現在、周辺住民や歩行者が利用できるように開放されている“公開空地”は東京千代田区内に120カ所以上存在していますが、その存在はほとんど人びとに知られることなく、その利活用は限定的な状況にあります。この“公開空地”を「アートによって創造的に活用していくこと」、そして「若手アーティストたちにパブリックスペースでの実験的な発表の場を提供すること」、このことによって「人びととのクリエイティブな潜在力を刺激すること」、それがこのエキジビションの目的です。

コンペティション・テーマ

【本とまち】
本の街”としても知られる御茶ノ水の特色を反映したアイディアを募集します。
グランプリの展示場所は東京お茶の水駅の駅前広場。毎日多くの人びとが往来するこの空間は、待ち合わせ場所であり、地下鉄(千代田線)の地下入口となる活気に溢れた空間です。
古書店街、楽器店街、スポーツ店街、喫茶店街。かつて日本のカルチェラタンと称され、学生街として発展してきた東京御茶ノ水。この街のスピリッツを体現するような独創的な提案を求めます。

対象公開空地

JR御茶ノ水駅・東京メトロ 新御茶ノ水駅の駅前広場

現地イメージ

現地イメージ



より大きな地図で ART × 公開空地 ― 都市に介入するアート・コンペティション ー を表示

「対象公開空地」図面のダウンロードはこちら(3.4MB)

展示期間

テンポラリー・エキジビション(グランプリ受賞ワーク)
2014年3月7日(金)~ 3月11日(火)
※雨天の場合延期します。
※パフォーマンスの場合、実施時間は要相談。

グランプリ 1点 (賞金 200,000円)
※作品制作費を含みます。
※運送費は要相談。展示作業のための旅費・宿泊費は別途支払(上限あり)
※展示期間中にアーティストによるプレゼンション・トークにご出演頂きます。

グランプリ受賞者は、今最もクリエイティブなクラウドファンディングである「キャンプファイヤー」に掲載するサポートを受けられ、プロジェクトのさらなる資金獲得と発信ができます。


準グランプリ 2点 (賞金 20,000円)※パネル展示のみ
※アーティストによるプレゼンテーション・トークにご出演頂きます。
イベント参加への旅費は別途支払(上限あり)


特別賞 1点 (記念品)
※入選作品を展示公開し、市民による投票(2014年1月下旬)で決定します。

審査員

岩井 成昭 (秋田公立美術大学教授/アーティスト)
佐藤 慎也 (日本大学理工学部建築学科准教授/建築家)
藪前 知子 (東京都現代美術館学芸員)
立川 資久 (東京都千代田区区民生活部長)
瀬川 昌輝 (昌平不動産総合研究所 代表取締役)

審査方法

1次審査:審査員による審査でグランプリ、準グランプリ、入選を決定
2次審査:市民投票による審査で特別賞を決定
(新御茶ノ水駅の駅前広場にて展示し、投票により決定します。)
※最終審査終了後にすべての応募者にメールで結果を通知します。
※審査結果についてのお問合せはご遠慮下さい。

応募作品

  1. 美術、パフォーマンスなどジャンルは問いません。※音楽は不可。
  2. 応募点数の制限はありません。
  3. コンペ未発表で本人が知財権を有する作品に限ります。
  4. 展示撤収が容易な作品であること。

応募資格

  1. アーティスト、あらゆる分野のデザイナー、技術者、学生など、団体あるいは個人やグループで応募できます。
  2. 性別、国籍は問いません。ただし、展示準備期間(2014年2月上旬)に日本国内に在住、または滞在していること。
  3. 提案は、国内外未発表なものに限ります。※卒業作品は応募可能です。
  4. 表彰式に出席できる方(受賞された場合)。
  5. 応募時に35歳までであること。

※グランプリ受賞者はトークイベントに参加できる方。

応募方法

schedule
1. 期間内にエントリーフォームよりエントリーして下さい。
2. 受付後、E-mailにて申込番号と申込書をお送りします。
3. 複数作品を応募いただく場合もエントリーは、1度で結構です。

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エントリー受付期間:2013年10月1日(火)~2013年12月20日(金)

応募料

1応募につき2,000円
※応募料金の振り込み先は、エントリーした後にメールにてお伝え致します。

提出物

【郵送による申込みのみ可】

  1. 作品のスケッチまたは作品の写真
    – 提出サイズ:A3パネル(額縁なし) ※張りパネや厚手のパネルでも可。
    – 映像、パフォーマンス作品の場合は、1作品最長5分程度。ダイジェスト版として1分程度にまとめたものをあわせて提出してください。形式は「MPEG4」または「AVI」。データはDVDにてお願いします。
    – 作品プランは返却いたしません。
  2. 申込書
    作家名、住所 、電話番号、メールアドレス  
    ※応募作品ごとに申込書をコピーして、パネルの裏側に添付してください。
  3. これまでの作品・参考資料・略歴等の資料
    ※参考作品画像データをCD/DVDに収めても可。

スケジュール

エントリー期間:2013年10月7日(月)〜12月20日(金)


応募期間:2013年10月7日(日)〜12月23日(月)


1次審査:2014年1月中旬(グランプリ、準グランプリ決定)


2次審査:2014年1月下旬(特別賞決定)


表彰式、交流会:展示期間中に予定。


展示:2014年3月7日(金)~ 3月11日(火)
※アーティストによるプレゼンテーション・トークを開催します。


その他注意事項

  • 著作権その他第三者の権利を侵害しているものは、審査の対象外となります。また、受賞発表後であっても、これらの条件に反していることが判明した場合、受賞を取り消します。
  • 提出された資料は原則として返却いたしません。必要な場合は予め控えを残した上でご応募ください。
  • 応募要項に記載された事項以外について取り決める必要が生じた場合、主催者の判断により決定します。応募者は、その内容に同意できなかった場合は応募を撤回できますが、応募にかかった一切の費用は返却いたしません。
  • 展示期間中の天災、その他不慮の事故・破損・紛失については、主催側は一切の責任を負いません。
  • 受賞者の氏名、年齢、経歴などは、印刷物、ウェブサイトなどで公表させていただきます。
  • 個人情報は、応募作品の受付や問い合わせ、審査の結果通知、その他コンペの業務で必要と思われる事項ために利用させていただきます。原則として、法令の規定に基づく場合を除き、ご本人の承諾なしに、それ以外の目的で個人情報を利用または第三者に提供することはいたしません。その他個人情報の取り扱いにつきましては、主催団体の「プライバシーポリシー」をご参照ください。

主催・協力・助成

主催:特定非営利活動法人アート&ソサイエティ研究センター(事務局)
協力:特定非営利活動法人お茶の水公共空間マネジメント、お茶の水スキマ大学
助成:東京都千代田区「平成25年度千代田区文化事業助成」
主催団体について

問合せ先

〒101-0021 東京都千代田区外神田6丁目11-14 3331 Arts Chiyoda 311E
NPO法人 アート&ソサイエティ研究センター
email : artcompe@art-society.com
※ 必ず件名に「アートコンペティション」と記載してください。

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    10/13開催「植物を紙に摺り付けて描くワークショップ」を終えて

    先日10月13日(日)に今年もお茶の水アートピクニックの関連イベントに参加させていただき、ECOM駿河台を会場に、アーティストの村山修二郎さんを講師にお迎えして「アート×自然 植物を紙に摺り付けて描くワークショップ」を開催いたしました。

    KONICA MINOLTA DIGITAL CAMERA

    植物で描くということについて、まず村山さんからご自身の活動を紹介していただきました。大きな画面にまさに植物で描いている村山さんの姿が映し出されると、ご参加いただいた小学生から大人まで皆アートの世界に引き込まれていきました。小学校でのワークショップや被災地での活動、植物の生命力についてなど、色々な画像を見せていただきながらお話をしていただきました。アーティストの活動を知る貴重な機会にもなったと思います。

    ワークショップ3

    それから気持ちの良いお天気の下、自分で使う植物を摘みに会場の外へ。摘み取る量は片手に握れるくらいで、一株から一摘み。皆さん思い思いにどこから採取しようか選びながらも、今回は会場のECOM駿河台さまのご協力で花壇のお花も採取できて、ちょっとしたブーケのように。

    ワークショップ1

    会場に戻って制作開始。村山さんから色を出すコツを教わりいざ。最初はとまどい気味ながらも、段々皆さん自分の世界へ。草花の香りが広がり、柔らかい光が差し込む会場はしばし穏やかな空気に包まれていました。

    ワークショップ2

    ワークショップの最後は感想会で、1人1人どのようなことを考えて制作していたのか発表しあいました。同じような葉っぱでも摺り付けてみると色が違ったり、思ったように色がつかないことから新しい発想が湧いたり・・、それぞれ新しい発見や体験をされて楽しんでいただけたようでした。
    「都会の真ん中でこのワークショップを行うことは自然に囲まれた山の中で行うこととまた違った意味がある」との村山さんのお話しを思い出しながら、このワークショップで出会った植物たちの感触や香りの記憶はきっとどこかにつながっていくのだろうと、都市空間での「アート×自然」の可能性に思いをめぐらせつつ、レポートを終わりにします。
    文:川口明日香 写真:A&S

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    10月13日開催「植物を紙に摺り付けて描くワークショップ」

    2013年10月13日(日)アーティストの村山修二郎さんをお迎えしてワークショップを開催します。

    murayama workshop

    企画意図

    昨今の私たちの社会は地球温暖化に加え、巨大地震、原発事故などによる大きな問題を抱え、子供たちにどのような環境を残していけるのか、真剣に考える時代となっています。また子供たちにとっても、このような社会を生き抜き、自分たちが住む環境を良い方向へと築いていくために、昨日までの価値観に捉われない、柔軟な発想を持つことがますます重要と考えます。アートの世界は発想の豊かさを実感できます。そこで、誰でもアートを身近に感じられる社会への一歩として、街中でのアートプログラムを開催します。都会の真ん中で自然に触れながら楽しめるプログラムです。

    実施計画

    コンセプトは「アートと自然」。上手い下手は関係なく、のびのびと楽しめる内容。

    場 所:ECOM駿河台2F(お茶の水アートピクニック開催エリア)
        アクセス>http://www.ms-ins.com/company/csr/ecom/access.html
    日 時:10月13日(日曜日)10:00~11:30
    対 象:小学生4~6学年 
    定 員:20人前後
    内 容:アーティストを講師に迎えて、採取した植物で絵を描きます。
    参加費:無料
    持ち物:完成した作品(B3サイズ画用紙)を持ち帰る袋など

    当日のスケジュール

    09:40 ~ 09:50 受付、集合
    09:55 ワークショップについての説明
    10:00 アーティストによるイントロダクション
    10:15 会場付近の植物を採取
    10:30 制作
    11:15 感想会、質問
    11:25 片付け、終了

    お申込み/お問い合せ先

    特定非営利活動法人アート&ソサイエティ研究センター
    Email: info@art-society.com
    小学校4~6年生の参加者を募集しています。
    件名に「10/13ワークショップ」、本文に「お名前、学年、参加人数」をご記入の上
    上記メールアドレスまでお申込み下さい。

    アーティスト プロフィール

    murayama

    村山 修二郎

    東京都生まれ。東京芸術大学大学院壁画修士課程修了。同大学大学院美術研究科博士後期課程美術専攻壁画三年在籍。近年は、生の草や花を手で直接紙や壁に擦り付けて絵を描いている。村山が新たに生み出し、形式化した絵画手法『緑画(りょくが・村山が名付けた造語)』である。植物に内在する根源性をつかんだ表現として唯一無二。その他の作品は、植物そのものの中にある、初源的な力を抽出した作品(絵画・写真・インスタレーションなど)で表現している。社会地域活動として、身近な植物のもつ微細なミクロな世界と、マクロ的視座から地域の植生の可能性をコンセプトに、植物と人と地域をつなぐコミュニティアートプロジェクトを様々な地域で主催・開催している。地域植生を再考察した、ワークショップも各地で断続的に行っている。また、植物とアートから出来る、東日本大震災復興支援の活動を「green line project」として立ち上げ、東京・宮城・秋田などで継続的に展開中。

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    2013:Art & Society 連続トーク・イベントVol.3のお知らせ

    ストリート・アート(グラフィティ)は、一方で、アクティビズムと結びついた社会的メッセージとして、また一方で、ヒップ・ホップ・カルチャーと結びついた自己表現として、世界各地に広がり、さまざまなかたちで出現しています。
    中でもラテン・アメリカは、今もっとも革新的なストリート・アートが生まれている地域と言われています。今回、日本ではあまり知られていない、南米コロンビアの首都ボゴタのストリート・アートを紹介します。

    0830 連続トークNo.3

    『都市空間を覆い尽くすストリート・アート~南米・ボゴタの街を歩いて~』
    トーク 秋葉美知子(NPO法人アート&ソサイエティ研究センター研究員)
    2013年10月11日(金)19:00-21:00 
    会場:3331アーツチヨダB1階 準備室

    定員:15名(先着順)参加費無料
    お申込み&お問合せ先:info@art-society.com

    ボゴタのストリート・アートを紹介したレポートも是非ご覧ください。
    http://www.art-society.com/report/20130826.html

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    街を彩り、突き刺すビジュアル・パワー
    南米コロンビアの首都ボゴタのストリート・アート

    6月末、筆者は、芸術文化マネジメント関連の国際学会に参加するため南米コロンビアの首都、ボゴタを訪れた。コロンビアというと、麻薬マフィアや反政府ゲリラが暗躍する危険な国という印象があるかもしれない。確かにボゴタの街には、犬を連れた警官や機関銃を持った兵士、民間の警備員などが数多くいて、常に警戒態勢という感じだが、ウリベ前大統領(2002~2010在任)が治安対策に重点的に取り組んだ結果,殺人や誘拐の件数は大きく減少しているという。740万の人口を擁するラテンアメリカで6番目の大都市ボゴタ。その中心部には、活気に溢れたストリート文化があった。

    ①日曜日の歩行者天国。フードから雑貨、アクセサリー、本、携帯電話まで、あらゆるものが露店で売られている

    ①日曜日の歩行者天国。フードから雑貨、アクセサリー、本、携帯電話まで、あらゆるものが露店で売られている

     サンパウロやブエノスアイレス、サンティアゴなど、ラテンアメリカの大都市は今、ストリート・アートのメッカとして注目されている。ボゴタもその例に漏れず、「Bogotagraffiti」と画像検索してみると、色鮮やかで強烈な個性を放つ作品群が目に飛び込んでくる。幹線道路のコンクリート擁壁から街中のブロック塀やシャッター、道路標識の裏まで、あらゆる「余白」が、ストリート・アーティストたちの表現の場になっているのだ。

    ②幹線道路沿いのコンクリート壁には、たいていこのようなグラフィティが描かれている

    ②幹線道路沿いのコンクリート壁には、たいていこのようなグラフィティが描かれている

    そんなボゴタのストリート・アート・シーンを見聞できる「Bogota’s Graffiti & Street ArtTour」に参加した。このツアーは、自身もクリスプ
    (Crisp)の名で壁画制作をしているオーストラリア人のアーティスト、クリスチャン・ピーターセンがプライベートに週3回行っている隠れた人気企画で、トリップ・アドバイザーの「ボゴタのアクティビティ」では第3位にランクされているほどだ。ウェブサイトで参加日と名前・メールアドレスを登録し、当日集合場所に行けばよく、料金は基本無料で終了時に適当な額を寄付するという、とても気軽な3時間弱のウォーキングツアーだった(筆者は15ドル寄付)。

    壁面に現れたビジュアル表現としてのストリート・アートを見るとき、ロゴや単純なキャラクターをスプレーペイントで描くグラフィティ・タイプのものと、多様な技法を使ってより絵画的に表現するミューラル(壁画)タイプのものがあることに気づく。前者はヒップ・ホップ・カルチャーと結びついた若者の自己表現として、後者はアクティビズムやコミュニティ運動と結びついた社会的メッセージ、あるいは都市環境改善の手段として、それぞれ別の発展史をたどってきている。ボゴタでは、両方の流れの影響を受け、ワイルドスタイルのグラフィティから社会問題を戯画化した作品、さらに純粋に楽しさや美を追究する絵画的ミューラルまでが併存・融合しているところに特徴がある。また、「ボゴタは世界一グラフィティに寛容な都市」とクリスチャンが言うように、市民の理解があり、警察も厳しく取り締まることがないことから、時間をかけて丁寧に描き込まれた作品が多い(それでも1作品を1 日か2日で仕上げるそうだが)。個性的なスタイルをもつ人気アーティストが何人(組)もいて、彼らの作品があちこちで見られることからも、ストリート・アートがボゴタの街を彩る重要なエレメントになっていることがわかる。

    ③グラフィティ・タイプのストリート・アート。MICOのサインが見えるが、地下鉄ペインティングのパイオニアとして知られる彼は、1969年にニューヨークに移住したコロンビア人である。これはMICOがコロンビアに凱旋して、地元のアーティストとコラボレートしたときのもの(“neon”は上から新しく書かれたものでMICOのライティングではない)

    ③グラフィティ・タイプのストリート・アート。MICOのサインが見えるが、地下鉄ペインティングのパイオニアとして知られる彼は、1969年にニューヨークに移住したコロンビア人である。これはMICOがコロンビアに凱旋して、地元のアーティストとコラボレートしたときのもの(“neon”は上から新しく書かれたものでMICOのライティングではない)

    今、ボゴタで最も精力的に活動しているアーティストは、Guache(グワッシュ)、DjLu(ディージェー・ルー)、Toxicómano(トキシコマノ=麻薬中毒者)、Lesivo(レシボ=有害な)の4人だろう。ストリートに視覚的かつ政治的・社会的なインパクトを与えることを目的に、それぞれ個人で、あるいはBogota Street Artというコレクティブとして、一目で「あ、これは○○だ」とわかるメッセージ性の強い作品を描き続けている。また、作品集を自費出版したり、ストリート・アートをテーマとしたトークセッションを行うなど、ストリート文化のオピニオン・リーダーの役割も果たしているようだ。写真④から⑦は、彼ら4人が一つの壁で合作した作品である。

    ④格差社会を風刺しGuacheの作品

    ④格差社会を風刺しGuacheの作品


    ⑤“ボゴタのバンクシー”と言われるDjLuのステンシル。彼は、建築家・写真家で、大学で教鞭も執っている。「ストリートを単に移動の経路ではなく、今起こっている何かに気づく場にしたい」という彼の、パイナップル爆弾や機関銃をモチーフにした反戦ピクトグラムは、街の至る所でで発見できる

    ⑤“ボゴタのバンクシー”と言われるDjLuのステンシル。彼は、建築家・写真家で、大学で教鞭も執っている。「ストリートを単に移動の経路ではなく、今起こっている何かに気づく場にしたい」という彼の、パイナップル爆弾や機関銃をモチーフにした反戦ピクトグラムは、街の至る所でで発見できる


    ⑥Toxicomanoはコンシューマリズムや支配階級を批判する作品で知られている。モヒカン頭の「エディ」は、資本主義社会からのはぐれ者キャラクター

    ⑥Toxicomanoはコンシューマリズムや支配階級を批判する作品で知られている。モヒカン頭の「エディ」は、資本主義社会からのはぐれ者キャラクター


    ⑦資本主義の搾取と富裕層の退廃を風刺するLesivo。右下の王冠をかぶったキャラクターは、ウリベ前大統領のカリカチュアらしい

    ⑦資本主義の搾取と富裕層の退廃を風刺するLesivo。右下の王冠をかぶったキャラクターは、ウリベ前大統領のカリカチュアらしい

    女性のグラフィティ・アーティストも多数活動しており、最も知られているのがBastardilla(スペイン語で“イタリック”の意)という覆面ミューラリストだ。自身の経験から、レイプ、DV、フェミニズム、貧困などをテーマに、力強い色彩とタッチで描いている。

    ⑧Bastardillaによる巨大なミューラル

    ⑧Bastardillaによる巨大なミューラル


    一方、社会的なメッセージ性より、壁画としての表現を追求するタイプのアーティストもいる。Stinkfishは、街で見かけた人物のスナップ写真を用いてその顔を巧みにステンシルしている人気ミューラリスト。個人としての活動のほかに、APCというゆるやかなクルーを結成して、協働製作している場合も多い。Rodez・Nomada・Malegriaの3人は親子で活動しているアーティストだ。イラストレーター、デザイナーとして長いキャリアをもつ父のRodezは、先にグラフィティを始めていた息子のNomadaに勧められてストリート・アートの世界に入ったという。“目”が印象的な彼らの作品はボゴタのストリートでも際立っている。グラフィティ・ツアーのガイドを務めるクリスチャンの作品も市内各所にあった。人物や動物のステンシルをコラージュした壁画のほか、ストリートのアクセサリーとしてさりげなく壁に貼り付けられた小さな陶製のマスクも彼の作品である。

    このようにアーティストそれぞれ作風や方向性は異なっていても「ストリート・アートは都市生活への“intervention(介入)”であり、街をを生き生きとさせるもの」という意識は皆に共通し、お互いの作品をレスペクトしているという。

    ⑨Stinkfishのステンシル。「グラフィティは都市を再生させる手段だ」と彼は言う

    ⑨Stinkfishのステンシル。「グラフィティは都市を再生させる手段だ」と彼は言う

    ⑩Rodezは、息子のNomadaからグラフィティのテクニックを習ったという

    ⑩Rodezは、息子のNomadaからグラフィティのテクニックを習ったという

    ⑪Nomada   ⑫Malegria

    ⑪Nomada ⑫Malegria

    ⑬グラフィティ・ツアーの案内人Crispのミューラル。彼はオーストラリアからイギリスを経て3年前にボゴタに移住

    ⑬グラフィティ・ツアーの案内人Crispのミューラル。彼はオーストラリアからイギリスを経て3年前にボゴタに移住


    ⑭右がCrispの陶製マスク。壁からはがしてお土産に持って行く人がいるので、なるべく高いところに貼るのだとか

    ⑭右がCrispの陶製マスク。壁からはがしてお土産に持って行く人がいるので、なるべく高いところに貼るのだとか

    このように紹介するとボゴタはストリート・アート天国のように思われるかもしれない。しかし、問題がないわけではない。2年前、グラフィティを書いていた16歳の少年が、警官によって不当に射殺された事件をきっかけに、グラフィティの規制と容認に関して論議が高まっている。市当局は、歩道、バス停、信号機、病院、学校、墓地など禁止する場所を指定するとともに、ボゴタの都市文化に寄与するグラフィティは推進すべきだとして、一定の区域に限って積極的に認める方針だという。そのパイロット・プログラムとして、この夏、市の芸術振興組織が5組のアーティストを選びダウンタウンの幹線道に大規模な壁画を制作するイベントを行った。こういった試みによって、アーティストは大作に取り組むチャンスを得、市はツーリズムにもつながる良質のミューラルを得ることができる。しかし、ストリート・アートがオフィシャルなものになってしまうと、「都市環境への招かれざる介入」というグラフィティが本来持っているパワーが失われてしまうという反論もある。

    ボゴタのストリート・アートは、今後、コミッションによる“パブリック・アート”としてのミューラルとゲリラ的なメッセージとしてのグラフィティに、二極化していくかもしれない。

    (文/写真:秋葉美知子)

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    2013:Art & Society 連続トーク・イベントVol.2のお知らせ

    今年で55回目を迎える「ヴェネツィア・ビエンナーレ」。現代美術の国際美術展覧会として120年ほどの歴史をもち、なおも世界の美術動向に大きな影響を与え続けている。そして、毎年恒例の世界一のアートフェアとして知られる「アート・バーゼル」。今やスイスの古都バーゼルは、現代アートビジネス界の中心的都市として不動の地位を獲得し、フェアーには世界各国から有名コレクターや美術館のキュレーターなどが集まる。
    この二つの巨大アート展について、コンテンポラリー・アートのギャラリストとしての経験をもつ荒谷さん独自な視点から語っていただく。

    A&Sトーク20130809

    『ヴェネチア・ビエンナーレ&アートバーゼル報告会』
    トーク 荒谷智子
    2013年8月9日(金)19:00-20:30 
    会場:3331アーツチヨダB1階 準備室

    定員:15名(先着順)参加費:1,500円(軽食代含む)
    お申込み&お問合せ先:info@art-society.com

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    2013:Art & Society 連続トーク・イベントのお知らせ

    社会に深く関わるアートである「ソーシャリー・エンゲイジド・アート(Socially Engaged Art) 」について、1990年代〜現代までの歴史的な流れを具体的なアーティストのプロジェクトを紹介しつつ解読していきます。
    アメリカの事例から、何を学べるのか?応用できるのか?アートが社会にエンゲイジメントする方法とは? 
    トークでは、菊池さんがアメリカで手がけたプロジェクトや、「ソーシャリー・エンゲイジド・アート」を教育の現場で取り入れる手法を紹介したパブロ・ヘルグエラ氏の著書も含めて話を進めていく予定です。

    PowerPoint プレゼンテーション

    『アートの仕掛け:アートを道具とした新しい姿のコミュニティづくり』
    トーク 菊池宏子(コミュニティデザイナー)
    2013年7月25日(木)19:00-20:30 
    会場:3331アーツチヨダ3階 302Room

    定員:30名(先着順)参加費無料
    お申込み&お問合せ先:info@art-society.com

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    市民の声でつくる世界最大のアートショー
    イギリス中がアートで満たされるプロジェクト「Art Everywhere」

    「2013年夏、イギリスが世界最大のアートギャラリーとなる」
    この夏、街頭広告スペースを使ってイギリス中をアートで溢れさせようというプロジェクト『アート・エブリウェア(Art Everywhere)』が注目です。

    Freud

    Lucian Freud, Man’s Head (Self Portrait I), 1963, Whitworth Art Gallery


    『アート・エブリウェア』は、市民の投票で選ばれたイギリス美術を代表する美術作品を看板ポスターに印刷して、イギリス全土の街頭広告スペースを埋め尽くそうというプロジェクトです。期間は8月10日〜25日の2週間、少なくとも15,000カ所のビルボードやバス停などの広告スペースに展示されることになります。

    イノセントグループ(イギリスで大人気のスムージーブランド)の共同設立者であるリチャード・リードと、ナショナル・ファンドレイジング・チャリティーアート・ファンドテイト美術館のコラボレーションで始まったこのプロジェクトは、ポスター印刷会社と街頭広告の運営会社の協力で実施されます。

    このプロジェクトの主役はイギリス中の市民の方々。ウェブサイトで公開されている候補作品のリストから、Facebookの「いいね」ボタンでお気に入りの作品に投票でき、人気トップ50位の作品が実際にポスターとなり展示されます。(7月10日に投票は終了)

    また、クラウドファンディングによるサポートで「パトロン」となることもでき、3ポンド(約450円)の寄付金額が1枚のポスター作成のための資金になります。さらに15ポンド(約2,250円)以上の寄付で、英国人アーティストのロブ・アンド・ロベルタ・スミス(Rob and Roberta Smith)のエディション作品などがリターンとして送られるなど、キックスターター式の今風で親しみやすい仕組みが取り入れられています。

    MCM

    Michael Craig-Martin, Inhale (Yellow), 2002, Manchester Art Gallery


    リードによる発案で始まったこのプロジェクトの狙いは、イギリス美術史上の傑作を分かち合える祭典とすること。そして何よりもアートが街を行き交う多くの人々の目に留まることによって、人々がギャラリーに足を運ぶきっかけになればと期待しています。

    また、ロゴやエディション作品を提供し、プロジェクトを深くサポートしているロブ・アンド・ロベルタ・スミスは、プロジェクトが子供たちに良い影響を与え、美術を選択科目にしたり、美術学校にいくきっかけとなることを望んでいます。

    サポートアーティストの1人、ダミアン・ハースト(Damien Hirst)も「アートはすべての人のためにあるし、みんなアートの恩恵を受けられるべきだと思っている。自分たちがストリートで見たい作品を選べるなんて、イカしたプロジェクトじゃないか」とコメント。

    Constable

    John Constable, Salisbury Cathedral from the Meadows, c.1831,Tate


    日本でも個展が話題のフランシス・ベーコンを始め、クラシックからコンテンポラリーまで網羅した候補作品の充実さもさることながら、このプロジェクトの一番の魅力はなんといっても市民の人たちが関わるプロジェクトだということ。作品を選んだり、寄付をしたり、観賞するだけではなくて楽しくコミットできる仕組みで、市民に寄り添ったアプローチが好印象です。

    思い入れのある作品やお気に入りの作品を選ぶ市民の声によって、企業の広告の代わりにアート作品を街の中に溢れさせる『アート・エブリウェア』プロジェクト。今年のイギリスの夏はきっと人々の豊かな気持ちで満たされるでしょう。

    投票はこの記事の公開時点で締め切ってしまっていますが、寄付はまだまだ受付中。ウェブサイトで紹介されている寄付金額に応じたリターンは日本にも発送可能とのことなので、海の向こうにあるイギリスの街角にポスターを1枚贈る気持ちでサポートしてみてはいかがでしょうか。

    (文:井出竜郎)



    AE Logo

    Art Everywhere
    arteverywhere.org.uk

    (イギリス全土で開催、2013年8月10日〜25日)



    参照サイト:The Guardian “British art to take over billboards in plan to make UK world’s largest gallery”
    http://www.guardian.co.uk/artanddesign/2013/jun/07/british-art-take-over-billboards

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