アート&ソサイエティ研究センターSEA研究会の企画・編集によるアンソロジー『ソーシャリー・エンゲイジド・アートの系譜・理論・実践』をテキストとする連続研究会の後期日程を3月29日(金)より開催します。
本書は、SEAの系譜、理論、実践をさまざまな視点から取り上げていますが、研究会ではトム・フィンケルパールのエッセイ「社会的協同というアート~アメリカにおけるフレームワーク」に焦点を当てます。各回、このエッセイで展開されているいくつかの重要なトピックに関連して、専門家によるレクチャーを受け、時代背景や思想をより深く理解するとともに、現在の日本の状況に照らしながら、SEAという芸術実践が起こった理由とその意味を、参加者と共にディスカッションしています。後期の研究会は、前期では深く掘り下げなかったフェミニズムから始め、フィンケルパールのエッセイの後半を読みながら進めていきます。
前期に参加された方はもちろん、後期からの参加も歓迎いたします。
後期スケジュールとテーマ・講師
第5回 2019年3月29日(金)18:30 ~20:30
フェミニズムとアート
1960年代後半、「個人的なことは政治的なこと(The Personal is Political)」をスローガンとした第二波フェミニズムから学んだ女性アーティストたちは、女性としての自身の私生活や日常経験の中から社会的な問題を見いだし、表現活動をはじめました。グループ・インタラクションやコンシャスネス・レイジング(意識覚醒)という実践を通して、協働的な創造行為のアクションを生み出していきます。この回では、ジュディ・シカゴによる≪ディナー・パーティ≫等の具体例を示し、SEAの文脈を踏まえながら1970年代のフェミニスト・アートを読み解きます。
講師:北原恵
第6回 2019年4月4日(木)18:30 ~20:30
国際的な影響~ドゥボール、ボイス、フレイレ
ソーシャリー・エンゲイジド・アート(SEA)を考えるうえで、欧州や南米におけるSEAにつながる系譜も重要です。具体的には、1968年の「パリ五月革命」に理論的基盤を与えたギー・ドゥボール(フランス)、「社会彫刻」としてのアートを提唱したヨーゼフ・ボイス(ドイツ)、さらに教育思想家パウロ・フレイレ(ブラジル)などの国際的な影響があります。それらを読み解くと同時に、バンクシー(イギリス)にみられる同時代の「アート・アクティビズム」など、グローバルに展開するSEAについてお話しします。
講師:小田マサノリ
第7回 2019年4月25日(木)18:30 ~20:30
米国1970、80年代の政治的右傾化とアクティビズム
米国では1970年代に入ると60年代にはまだあった進歩的な時代の空気が薄れ、社会の保守化が進行します。その中で、特にレーガン政権以降、先鋭的なアートは保守派の標的とされる一方、エイズ危機に直面して行動を開始したACT UPのような、集団的政治アクティビズムとしてのアートの在り方も形成されていきます。この回では、米国における政治的右傾化や分断が深まる社会とアートの関係を、世界や日本の状況とも関連させながら考察します。
講師:小倉利丸
第8回 2019年5月9日(木)18:30 ~20:30
1980代以降のコオペラティブ・アート
最終回は、「1980年代以後のコオペラティブ・アート」のセクションに紹介されているアーティストやプロジェクトをより深く見ていくとともに、アート&ソサイエティ研究センターが現在まで取り組んできたSEA関連の調査研究やさまざまな活動から得た知見を含め、フィンケルパールの言う「社会的協同というアート」の系譜と現在について、日本の状況も加えて考察します。
講師:アート&ソサイエティ研究センターSEA研究会(工藤安代、清水裕子、秋葉美知子)
開催概要
会 場 3331 Arts Chiyoda B105マルチスペース www.3331.jp/access
定 員 30名(先着順)
参加費 4,000円(全4回分)※第5回研究会においてお支払いください。
参加にあたって
– 事前に『ソーシャリー・エンゲイジド・アートの系譜・理論・実践』(フィルムアート社)をお読みください。
– 可能な限り、4回すべてにご参加ください。
講師プロフィール
北原恵(きたはらめぐみ)
京都生まれ。大阪大学大学院・文学研究科教員。東京大学総合文化研究科博士課程修了(表象文化論・学術博士)。専門は表象文化論、美術史、ジェンダー論。女性アーティストや戦争画・国家・天皇の表象を研究。著作に『アート・アクティヴィズム』『攪乱分子@境界』(インパクト出版会)、『アジアの女性身体はいかに描かれたか視覚表象と戦争の記憶』編著(青弓社)他。1994年から「アート・アクティヴィズム」を連載中。http://www.genderart.jp/
小田マサノリ/イルコモンズ (おだまさのり / illcommonz)
1966年福岡県生まれ。中央大学、法政大学、東京外国語大学、上智大学などで講師を務める。89年から96年までケニアで文化人類学のフィールドワークを行った後、現代美術家として「日本ゼロ年」展や「第一回横浜トリエンナーレ2001」展などに出品。2002年、「現代美術家廃業宣言」を行う。 2003年、現代美術家たちの反戦プロジェクト「殺す・な」に参加。以後、「イルコモンズ」名義で様々な社会動に参加し、現代美術、文化人類学、アクティビズムと、領域横断的な表現・執筆・制作・研究・教育活動を行っている。
小倉利丸(おぐらとしまる)
1951年東京都生まれ。経済学者、評論家。富山大学名誉教授。専門は現代資本主義論、管理社会論。経済・宗教・思想・政治・労働・アート・音楽・管理社会・ナショナリズムなど、幅広くかつ先鋭的な研究や論考、講演等を通じて、現代社会の問題意識にゆさぶりをかけている。世界の市民、アーティストの街頭表現を紹介し、自らも街頭に立つことをいとわない。著書多数。今までの集大成的な著作は『絶望のユートピア』(桂書房 2016年)
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主催:NPO法人アート&ソサイエティ研究センター