アート&ソサエティ研究センターは、「ソーシャリー・エンゲイジド・アート(SEA)」と呼ばれる、地域や社会に能動的に関わっていくアートのあり方に注目し、この新しいアートの領域について理解し、考えていく「SEA研究会」を行っています。以下、各回の内容をブリーフィングしてご報告します。

第1回 「Introduction」を読む (2013年9月6日)
 Education for Socially Engaged Art
 — A Materials and Techniques Handbook —

Introduction (pp.ⅸ〜ⅹⅵ) のポイント

  • ソーシャリー・エンゲイジド・アートの理論化のプロセスが急速に進んでいるのに比べて、その実践における技術的要素についての議論はゆっくりとしか進んでいない。
  • この本の目的は、理論をめぐる論争やアイデアをうまく適用した事例を紹介しながら、「いかにアートを社会領域で用いるか」について、いくつかの手本を提供することである。
  • アートと教育のプロセスは類似している→社会にエンゲイジするアートワークへの挑戦は、教育分野の助けを借りればよりうまくいくだろう。
  • 第二次大戦後の北イタリアのレッジョ・エミリアで始まった幼児教育法から学ぶ。
  • 本書は、ソーシャリー・エンゲイジド・アートを規定する体系や実地訓練を提案するものではない。また、この種のアートのベストプラクティスを提示するものでもない。様々な分野(教育学、社会学、言語学、民族誌学など)から得られた知見に基づいて、ソーシャリー・エンゲイジド・アートの実践に役立つ技術をまとめたものである。
  • ディスカッション

  • ソーシャリー・エンゲイジド・アートを美術史の文脈の中でどのように位置づけるかについては、ケスター、ビショップなど研究者の間でも議論があるので、今後それらの議論も踏まえていく必要があるだろう。
  • 日本でもアート・プロジェクトの結果をどのように評価するのか、未だコンセンサスが形成されていないので、海外のケースを知ることは有用だろう。
  • 教育分野をはじめ、文化人類学、地政学などの方法論はアートにも応用できるので、このような分野でアートにも関心がある人々とのネットワークづくりが重要だ。
  • レッジョ・エミリア方式については、もう少し詳しく調べよう。
  • この本は、理論書、マニュアル本、ベスト事例集のどれでもない。いわば、社会にエンゲイジするアート活動に関わる人にとっての“心構え”を書いたものにあたる。
  • (モデレーター:秋葉)

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    SEA研究会

    アート&ソサエティ研究センターは、今「ソーシャリー・エンゲイジド・アート」と呼ばれる、地域や社会に能動的に関わっていくアートのあり方に注目しています。この種のアートは、欧米では様々な実践活動の蓄積があり、近年はアカデミックな研究領域としても確立してきていますが、日本ではまだ十分に理解が進んでいないように思われます。
    私たちは、こういったアートの新しい領域について、理解し考えていくことを目的として、自主的な勉強会「SEA研究会」を始めました。
    その第一弾として、ニューヨークMoMAの教育課でアダルト&アカデミック・プログラムのディレクターを務めるアーティストPablo Helgueraによる実践者向けのコンパクトな手引き書『Education for Socially Engaged Art~A Materials and Techniques Handbook』(Jorge Pinto Books, 2011)をテキストとしながら、日本の状況なども見据えて議論・考察し、その記録をこのページで報告していきます。同書のコンテンツは、以下のとおりです。

    今後、月1~2回のペースでこの書籍をテキストとしつつ、ソーシャリー・エンゲイジド・アートのフレームについて考えていきたいと思います。ご興味のある方はお気軽にお問合せください。

    問合せ先:info@art-society.com (件名に「SEA研究会について」と入れてください。)

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