2012年度の成果物完成のお知らせ
国際シンポジウムドキュメンテーションと「種は船」アーカイブ活動の記録

20130419

2012年度の当法人の活動をまとめた成果物が完成いたしましたので、お知らせいたします。

「ドキュメンテーション|国際シンポジウム 地域・社会と関わる芸術文化活動のアーカイブに関するグローバル・ネットワーキング・フォーラム」
すでにウェブでも予告しておりましたドキュメンテーションが完成いたしました。2013年2月13日に開催した国際シンポジウムのプレゼンテーションの内容を、日英バイリンガルでまとめてあります。

「活動の記録2012|『種は船 in 舞鶴』アーカイブプロジェクト」
当団体の共催事業、P+ARCHIVEでのアーカイブプロジェクトとして、日比野克彦氏のアートプロジェクト「種は船 in 舞鶴」のアーカイビングを進めたプロセスについてまとめてあります。

それぞれの冊子は、毎週木曜、金曜に開館しておりますP+ARCHIVEセンターにて配布しております。

また、郵送(送料ご負担)にてお送りすることも可能です。
ご希望の方にはこちらのフォームよりお申し込みください。

Art & Society Research Center

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光を共有するということ。
オラファーエリアソンの「Little Sun」プロジェクト

3331を照らす「Little Sun」
Photo: Art & Society Research Center


デンマーク生まれのアイスランド人アーティスト、オラファー・エリアソン(Olafur Eliasson)は「光」を自己の表現に取り入れてきた。
ロンドンのテイト・モダンで2003年に展示した「ウェザー・プロジェクト」では、鬱屈なロンドンの曇天にウンザリしているロンドン子へのプレゼントであるかのように、美術館の入り口となっている吹き抜けのターバイン・ホールに巨大な太陽を再現したインスタレーションを作り出し、一躍世界の注目を集めた。

Olafur Eliasson, The Weather Project
© Olafur Eliasson, Photo © Tate 2003


そしてオリンピック・イヤーとなった2012年のロンドンで、今度は手のひらに乗る程の小さいサイズになった太陽でこの街を照らした。オリンピックと併催された文化振興プログラム「ロンドン2012フェスティバル」に招待されたエリアソンは、新しいプロジェクト「Little Sun」を、2012年7月28日にテイト・モダンにて披露した。
(オリンピック憲章では、開催国はオリンピック開催期間中に文化的なイベントを開催することが求めている。2012年には、イギリス全土で12000個のイベントやパフォーマンスが、実に2万5千人もの世界中のアーティストが協力して各地で開催された。)

この「Little Sun」プロジェクトで、エリアソンはエンジニアのフレデリック・オッテセン(Frederik Ottesen)と協力して、その名が示す通り太陽を模した形のソーラー発電式ライトを2年がかりで開発した。このライトの機能は極めてシンプル。5時間の太陽光発電による充電で、夜間の照明として利用でき、3年ごとのバッテリー交換で最大20年は使用できる設計となっている。光源としてLEDを利用しており、明るさも申し分ない。大きさも手のひらに乗るサイズで持った感触も心地よく、誰にでも優しいデザインになっている。

そしてこのプロジェクトで注目すべき点は、「光」に強い関心を抱いて作品をつくり続けてきたエリアソンのアート作品であると同時に、ソーラーライトを世界中で販売するビジネスプロジェクトであり、そして日常的に電灯設備が整っていない地域に住む人々に「光」を届ける慈善事業でもあるということだ。

Olafur Eliasson and Frederik Ottesen, Little Sun, 2012
Photograph: Merklit Mersha


現在、世界では16億人の人々が電気にアクセスできない地域に住んでいる。これは世界人口の5人に1人は電気のない生活を送っていることになる。都市のように電力インフラが整っている地域では夜もスイッチ一つで部屋を明るくできるが、電力のインフラがない地域の人々は、灯油ランプを光源として頼らざるを得ない。燃料である灯油の価格高騰やランプの煤による健康被害(灯油ランプを一晩利用すると、一日に煙草2箱分を喫煙するのと同等の影響を受ける)など多くの問題を抱える灯油ランプは決して理想的な光源ではない。

先日ハリケーン「サンディ」の被害に見舞われて、暗転したマンハッタンを空撮したニューヨーク・マガジンの表紙が記憶に新しいが、福島第一原子力発電所の放射能放出事故から続く電力エネルギーの問題に象徴されるように、電力と明かりが生活にもたらす影響は大きい。スイッチ一つで明かりがつくことが当たり前になっている先進国に住む我々にも、電力エネルギーの在り方を改めて考え直すことが必要だ。
しかし、電力エネルギーは人間の生活に必要不可欠なインフラであるが、世界にはそもそも電気にアクセスすることもできない人々もいる。エネルギーの不均衡さが存在していることは、憂慮すべき大きな事実だ。

この電力エネルギーの不均衡な現実に対して、エリアソンが疑問を抱き美術作家として作り出したのが「Little Sun」だ。「人々が限りある天然資源を持続していく生活を続けていく為に何が必要なのかを再び考え直し、これから話し合っていく必要があるのではないか」とエネルギーの問題に対してアートの観点から提言している。

Olafur Eliasson and Frederik Ottesen, Little Sun, 2012
Photograph: Studio Olafur Eliasson


このプロジェクトでは、2013年までに50万個のライトを電力のない地域の人々に届け、2020年までに5000万個のライトを流通させることを目指している。エリアソンは、「Little Sun」によって、より安全で明るい、健康被害のないクリーンな光を得ることができ、子供は夜の時間でも教育の機会を得られ、大人も夜も仕事を続け生活に必要な収入を増やすことができ、彼らの生活が向上されることを期待している。

このライトの価格設定は2通りになっていて、電力インフラが整っている地域では€20で、電力にアクセスできない地域では$10で販売される。この価格差で電力インフラが整っていないエリアでも安く流通させることが可能となっている。$10という価格はバッテリーの交換が必要となる3年間の利用でも、灯油ランプよりも90%も安く費用を抑えられる。

電力エネルギーと明かりは、暗くなっても安心できる生活だけではなくて、現代までに人々の様々な活動を支えてきた。我々の祖先が火を洞窟に持ち込みその明かりで原初の美術である洞窟壁画を描いたように、明かりがあってこそ視覚芸術が常に発達し続けてきている。光と人間は決して損なわれない強い絆で結ばれている。

現時点では「Little Sun」はヨーロッパとアメリカにのみ発送となっており、アジアへの発送開始が待たれるところだ。時期がきたら、ぜひこのライトを購入してプロジェクトを支援してほしい。日が暮れてもスイッチを押せば明るくなる便利な現代社会、もう一度日々の生活における電力エネルギーと光の在り方を考え直すきっかけにしてみてはいかがだろうか。

Olafur Eliasson with Little Sun
Photograph: Tomas Gislason, 2012


「Light is for everyone ー 光をみんなのもとに」
美術館やアートの枠組みから飛び出し、オラファー・エリアソンの光は世界中に広がっていく。「Little Sun」プロジェクトは、光を使って人々の知覚的な興味を刺激するような視覚芸術を常につくり続けてきた作家らしいアプローチだ。この長期的なプロジェクトはまだ始まったばかりだが、エリアソンの光は、これから我々をどこに導いてくれるだろう。

Little Sun
http://www.littlesun.com

(執筆:井出竜郎)

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国際シンポジウム 地域・社会と関わる芸術文化活動のアーカイブに関する
グローバル・ネットワーキング・フォーラム|終了報告

「国際シンポジウム 地域・社会と関わる芸術文化活動のアーカイブに関するグローバル・ネットワーキング・フォーラム」は大勢の方にご参加いただき、無事終了しました。

シンポジウムについての概要はこちらをご覧ください。

アメリカ、韓国、ドイツ、そして日本から文化芸術活動のアーカイブの専門家の方々を招聘した国際シンポジウムが、2013年2月13日に国際交流基金 JFICホール「さくら」にて開催されました。

参加してくださったみなさま、本当にありがとうございました!
また、シンポジウム開催に際して、多くの方々より多大なご支援をいただき、心より御礼申し上げます。

ディスカッションの様子

ディスカッションの様子


それぞれのスピーカーのトークセッション、そしてディスカッションと大変充実した内容となりました。
今後、今回の国際シンポジウムの内容をまとめた記録集を作成する予定です。
詳細は改めてお知らせいたしますので、当日ご参加いただけなかった方もどうぞご期待ください。

国際シンポジウム会場の様子

国際シンポジウム会場の様子

(写真:© Haruka Hirose)

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2012年公開空地アート・プロジェクト“ニコニコ来々ドーム”開催のお知らせ

ニコニコ来々ドーム

今年の公開空地アート・プロジェクトは、千代田区御茶ノ水エリアにて開催します。

2012年10月6日(土)   10:00‐17:00
10月7日(日) 10:00‐16:00
開催場所:JR御茶ノ水駅前新お茶の水ビルヂング公開空地
三井住友海上駿河台ビル公開空地

“ニコニコ来々ドーム”とは:
お茶の水のシンボルであり、昔からまちを見守ってきた“ニコライ堂”を讃え、黄色い傘たちによるドーム型の彫刻をまちなかに出現させます。冷たい雨から人びとを守る傘のアート作品には、“ニコライ堂”のように、人びとを災害や苦難から守る思いが込められています。
展示後には、お茶の水の病院や学校、商店街、オフィスビル、駅などに、作品の説明をつけて寄贈します。単なる「使い捨ての傘」としてではなく、「アート作品となった傘」として人びとに使われていくことで、プロジェクトはその後も生き続けていきます。

アーティスト:志喜屋徹

協力:第9回お茶の水アートピクニック http://www.kanko-chiyoda.jp/tabid/2187/Default.aspx

お茶の水オープンスペース活用推進会議、お茶の水 茗溪通り会

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インフォーマル レクチャー Vol.12

われわれは今「公的な空間」をどこに求めればよいのでしょうか。アートを通じて国際的にパブリック・スペースの可能性を探ってきた2人のファシリテーターを迎え、パブリック・スペースの多元的な読みとき方に迫ります。

「パブリックスペース」と言えば、何を思い浮かべますか。 私たちの「公的な空間」とは、国・市に提供され、管理された場所を言うのでしょうか。それとも、ただの通行するための場所でしょうか。公園、駅、道路、ショッピングセンター、広場、カフェ、ホテル。あるいはインターネットのソーシャルスペースでしょうか? 今「パブリック」の領域は、広がっているのでしょうか、それとも反対に小さな「島」になっているのでしょうか。私たちは日常生活の中であまり意識せずに「パブリックスペース」に関わっていますが、実際、何の意味があるのでしょうか。

「パブリックスペース」とは、さまざまな人が共存し、さまざまな行為が行われ、多様で、多くの可能性を持っている場所です。「パブリックスペース」は政府などに作られたものではありません。私たちのそれぞれの行為、思い、想像力つまり広い意味での「アート」によって構築されています。
では、そのような場所で、私たち個人と個人は、交流・コラボを通してどのようなことができるでしょうか。

今回は、プレゼンテーションのあと、ご一緒に行うワークショップを通して、パブリックスペースの在り方、可能性、その未来を検証します。

『パブリックスペースはどこにある?』
2012年1月24日(火) 19:30~21:00(開場 19:00)

トーク:太田エマ(インディペンデントキュレーター)

山岡佐紀子(アーティスト)

【会場】amu
【共催】NPO法人アート&ソサイエティ研究センター/amu

 

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インフォーマル レクチャー Vol.3

IFレクチャーの3回目は、出版社フィルアート社編集長の津田広志さんをお呼びしてお話をうかがいます。津田さんは、アートエディターとして大野一雄『稽古の言葉』川俣正『アートレス』などのアーティストブックやアルフォンス・デーケン『あなたの人生を愛するノート』、『アート・リテラシー入門』など「読者参加型」の本を多く企画編集されてきました。2000年頃より、観客の生の感性を大切にした「アート・リテラシー」の必要性を説かれ、社会人を対象に広く普及活動もされています。マイブームを語る私語や「うまい、きれい」な言葉だけが氾濫する現在、アートと遭遇して「たじろぎ」や「感動」をかろうじて言葉にすることこそ、各人の陰影をもった深い経験を作ると言われます。「アート・リテラシー」とはなにか。「表現するオーディエンス」とは誰か。アートと鑑賞者のインタラクションの現在形を語っていただきます。

『アート・リテラシー: 表現するオーディエンスのために』

2月7日(土) 15:00~17:00

トーク: 津田広志(Hiroshi Tsuda) アートエディター

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インフォーマル レクチャー Vol.2

IFレクチャーの2回目は、2007年のヴェネチア・ビエンナーレのアペルトに招聘され、現在若手日本人アーティストとして国内外で注目を集めている森弘治さんをお呼びします。クリシュトフ・ウディチコに学び、現代社会の不可視なシステムを人々に気づかせ、アクセスできるためのディバイスとしてアートをとらえる森さんの考えは、今日の、アートの社会化を是とする地域アートプロジェクトのトレンドに疑問を投げかけます。当日は、森さんのアーティストとしての基礎を形成したマサチューセッツ工科大学での教育プログラムや現在海外で行われているエクスペリメンタルなアートプロジェクトを紹介する予定です。社会とアート関係をクリティカルな切り口から考え続ける森さんのお話は、大変刺激的なレクチャーとなるでしょう。

 

『アートによる“パブリック・インターヴェンション(介入)”』

1月23日(金) 19:00~20:30

トーク: 森 弘浩 (Hiroharu Mori)

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インフォーマル レクチャー Vol.1

現在、イギリスではアートによる都市再生やアートによる多面的な社会の統合を求め、活発な試みが行われています。第一回目の「A&Sインフォーマル・レクチャー」では、画像や映像を交えてその現状を報告し、参加者の皆様からのご意見、ご質問をまじえながら、くつろいだ雰囲気の中でディスカッションを進めていきたいと考えております。
本レクチャーは15数名程度の会にしたいと思っておりますので、皆様と交流を深めながら、これからの社会とアートについて意見交換を行えればと考えております。

 

『イギリス都市におけるアートの実践報告』

12月19日(金) 19:00~20:30

 

第1部: 清水 裕子 (Hiroko Shimizu)

『都市再生とパブリックアートの可能性 ―イギリス Channel 4 Big Art Project―』

第2部: 工藤 安代 (Yasuyo Kudo)

『リバプール・ビエンナーレ、二ューキャッスル/ゲイツヘッド市の景観とアート』

 

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