Watermarks Project ウォーターマークス・プロジェクト

2010年4月30日から5月2日にかけて、テネシー州の中西部を猛烈な雷雨と竜巻が襲い、ナッシュビルを中心に1万戸以上が被害を受け、19人が命を失った。この大災害後、地域の人々は “ボランティア・ステート”というテネシー州のニックネームに恥じず、互いに助け合い、復興に努めた。
Metropolitan Government of Nashville and Davidson Countyは、この未曾有の災害を人々の記憶にとどめ、コミュニティの復興努力をたたえるたため、甚大な被害を受けた6つの地区に、人々集う場所としてのメモリアルを設置することを決定。2011年12月に、メトロ・ナッシュビル・アーツ・コミッション(MNAC)がパブリック・アート事業の一環として、このプロジェクトにふさわしいアーティストを公募した(これまでの実績を審査するRFQ方式。対象は、ナッシュビルから400km圏内に住むアーティスト)。
プロジェクトの目的は、次のように述べられている。
 ○ナッシュビル市の特質をふまえ、場所に意味を与える
 ○コミュニティの視覚的個性や特性に貢献する
 ○住民が2012年の大洪水を思い出す場所をつくる
 ○人々の記憶にとどめる
 ○ナッシュビルのスピリットとプライドをパブリック・アートによって増進する
選考委員会によって選ばれた6アーティストは、それぞれコミュニティ・ミーティングに基づいてデザインワークを行い、2012年4月にMNACが最終デザインを承認。パブリック・プレゼンテーションを経て、2012年12月から2013年10月にかけて設置作業が行われた。制作費は、1ロケーションにつき、2万ドルが上限とされた。
また、このプロジェクトを素材に、幼稚園から小学校4年生までの子どもたちに「アイデンティティ、コミュニティ、助け合い」の重要性を教えるためのツールとして『クラスルーム・ガイド』が作られた。

Anchor in the Storm アーティスト: Betty and Lee Benson 洪水の時、近くに石灰岩採石場があったおかげで、水の流れが変わり、コミュニティの家屋が救われた。石灰岩と筏を鎖でつないたデザインは、コミュニティと採石場との強い結びつきを表現している。

Anchor in the Storm アーティスト: Betty and Lee Benson
洪水の時、近くに石灰岩採石場があったおかげで、水の流れが変わり、コミュニティの家屋が救われた。石灰岩と筏を鎖でつないたデザインは、コミュニティと採石場との強い結びつきを表現している。

Bellevue Bench Mark アーティスト: Craig Nutt この地区をうねって流れるハーペス川を豪雨が襲った。川流れをモチーフとしたベンチ。

Bellevue Bench Mark アーティスト: Craig Nutt
この地区をうねって流れるハーペス川を豪雨が襲った。川流れをモチーフとしたベンチ。

Emergence アーティスト: Buddy Jackson 地面から出現するアフリカン・アメリカン女性の顔は、この地区のひとり一人が経験した、危険、喪失、強さ、決意を象徴している。

Emergence アーティスト: Buddy Jackson
地面から出現するアフリカン・アメリカン女性の顔は、この地区のひとり一人が経験した、危険、喪失、強さ、決意を象徴している。

Liquid 615 アーティスト: Michael Allison コミュニティ・センターの壁面に取り付けた銀色のパイプから、240本の吹きガラスのしずくがぶら下がり、夜はLED照明がつく。しずくは洪水の水と人々の涙を表現しているが、照明が入ると美しく、コミュニティを元気づける光となる。

Liquid 615 アーティスト: Michael Allison
コミュニティ・センターの壁面に取り付けた銀色のパイプから、240本の吹きガラスのしずくがぶら下がり、夜はLED照明がつく。しずくは洪水の水と人々の涙を表現しているが、照明が入ると美しく、コミュニティを元気づける光となる。

Pier アーティスト: Derek Cote カンバーランド川を望むスロープに4.5mの吹き流しを伴ったベンチを4台設置。吹き流しには、川とコミュニティの人々を象徴する4つの言葉“Respect, Strength, Spirit, Depth”がプリントされている。

Pier アーティスト: Derek Cote
カンバーランド川を望むスロープに4.5mの吹き流しを伴ったベンチを4台設置。吹き流しには、川とコミュニティの人々を象徴する4つの言葉“Respect, Strength, Spirit, Depth”がプリントされている。


Tool Fire  アーティスト: Christopher Fennell コミュニティとボランティアによる復旧作業を記憶に残すため、実際に作業で使われたシャベルなどの金属製の道具を溶接して黒く塗り、ファイア・ピットの中に炎のように立ち上げた。

Tool Fire アーティスト: Christopher Fennell
コミュニティとボランティアによる復旧作業を記憶に残すため、実際に作業で使われたシャベルなどの金属製の道具を溶接して黒く塗り、ファイア・ピットの中に炎のように立ち上げた。

アーティストBetty and Lee Benson / Craig Nutt / Buddy Jackson / Michael Allison / Derek Cote / Christopher Fennell
アーティスト(日本語)ベティ&リー・ベンソン / クレイグ・ナット / バディ・ジャクソン / マイケル・アリソン / デレク・コーテ / クリストファー・フェネル
ジャンル(建築家、ランドスケープなど)アーティスト
場所(国)アメリカ合衆国
場所(原語)Nashville, Tennessee
完成年2013
施主・主催Metro Nashville Arts Commission
関係団体(共催、後援、助成、協賛、協力)
資金源公的資金
資金源(その他の場合)
予算規模(円)1000万〜5000万未満
外部リンクhttp://www.nashville.gov/Arts-Commission/Public-Art/Find-An-Artwork/Collection/Watermarks.aspx
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